BSテレ東で土曜日に放映されている『土曜の夜は寅さん4Kでらっくす』を毎回,結構楽しく見ている。
結論からいえば,「若い頃にわからなかったものがわかるときがある」ということだ。
寅さんをそもそも映画館で見たのも,結構最近のはず。最後の作品が公開されたとき,新宿に行ったんだ。
名場面とか名ゼリフっていくらでもあるけれど,自分にとっての寅さんは,「果たして21世紀の合理化は人類に平和をもたらしたのか」がテーマだ。
音無美紀子さんがマドンナ役で出てくる時代は1981年。僕が中学生だったとき。
そのときの風景が映ってくる。ああ,たしかに昔は改札に人がいるのがあたりまえだった コンビニなんてほぼない時代で,釣りでは商店でしっかり買い出ししないと大変なことになったし,基本的に前夜に用意を済ませたものだ。
合理化されて,合理化には終わりがなくて,延々続くのが合理化。仕事も,一つ合理化するとまた合理化。そして人員が減っていく,それは合理化されたから。
それって本当に平和で安心な生活なのかな,と寅さんを見ると感慨にふけるのだ。
不合理や無駄って,いま考えるとそれなりに意味があって,どうしても人間が必要になるからそうした仕事があって,人間関係も密になる。
寅さんは,一見不器用でヤクザな生活を送っているが,よく見ればきわめてまっとうな労働者。パチモン売っていたって,買った客が満足すればそれでいいわけだ
山田洋次監督は満州引き上げだから,こうした人情の機微に通じているのだろう。男の引き際,女の引き際,本当に毎回見事な演出だし,演じきる女優陣に毎回鷲掴みにされる自分の心は少年のままだったりする。
パレスチナ問題は,なんと自分が産まれる前から行われているくだらない戦争。戦争に大義などなく,あるのは愚かな殺し合い。そしていまはそれがインフレに繋がっている。ああ,もちろんロシア・ウクライナ紛争も同様である。
1980年代は,いま振り返ると黄金の時代だったけれども,大人だった両親や先生は大変だったはず。素行不良なのに数学と英語だけは成績がいい僕のような生徒なんて,扱いにくいったらありゃしないよね。
まあ,いろいろなことを考えさせられる今回の寅さんでした。