Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

精霊漲るシュパーゲル

2005-05-17 | 料理
プフィングステンの今日、シュパーゲルを食わずしてどうしよう。土の下に芽を出し、陽に当たる事も無く、摘み取られたシュパーゲルの息吹こそが大地の精霊だ。地霊とでも呼ぼうか。

地下の球根類などの野菜は多いが、白子のものは少ない。フェンネル等が思い浮かぶ。嘗て、白ワインのご相伴として推挙した。これも未だ市場に出ているが、ここ数週間はシュパーゲルのスマートで時流に乗った姿に隠れて、幾分色あせて見える。

シュパーゲル研究者になって粗十日が経つ、シーズン二度目のシュパーゲル食のために、キロ当たり€3,90を奮発した。木の箱の中に横に並べられ白くはにかみがちのそれは、地元産の中太である。商店も客のセルフサーヴィスを許さない、毅然とした態度でこれを披露する。そこは地元で有名な八百屋なので、一般に商品の質はスーパーと比較出来ないほど高く、価格はしばしばスーパーより安い。だから、このシュパーゲルも町のスーパーでは二倍から三倍してもおかしくない。

新鮮なシュパーゲルは、その皮むきからして違う。石突きを切ると、その蔕の皮が捲れ上がる。この時捲れ挙がった、皮を削いで行く。掘り出して時間が経ったものは、木の様に内側までが堅くなって上手く剥けなくなる様だ。反対に新鮮なものは、先へと向って薄く削げ上がって行くようだ。薄く剥ける事が理想だが、自然の摂理に背く手もあるまい。

こうして剥いたシュパーゲルは、品質がよい事もあるが苦味が残らない。ハムとジャガイモに、更にバターを、茹で上がりの少し黄色かかったシュパーゲルに添えた。バターを溶かして、ソースにするのが正式である。そしてワインは、そこそこに苦味のある辛口2004年産リースリングキャビネットを開けた。このワインは、その幾分貧しいその香りと後口の濁りを批判したが、食事には申し分が無い。

しかし、シュパーゲルの更なる繊細さを詮索しようと思えば、更に上質のワインを合わせることも可能である。これは、決してキャビネットクラスと言うことではない、寧ろQBAクラスで上質のものを求めたい。そうする事によって、味覚への神経が研ぎ澄まれ、更なるシュパーゲルの味覚の旅への入り口になるような気がする。食事をすると、如何してもワインで飲み下すようになるが、その前の一口が大切なのである。つまり、後味が少し悪くても繊細なワインであれば食事の質を挙げる事が出来るということになりそうである。

シュパーゲルの食生活が示すように、ドイツ家庭の今日のライフスタイルに合わせた食事は、低脂肪、低塩、低カロリーが標準になっている。その傾向は、質の高いリースリングなどのワインを愉しむ家庭では顕著ではないだろうか。リースリングワインは、ソースの強い肉食やミルク味にはあまり合わないからである。すると自然と菜食のサラダや温菜などが好まれて、ワインによる食欲増進とともに上の要素を持った 素 材 を 愉 し む 食生活が遂行されて健康なライフスタイルへと繋がっている。

さて、シュパーゲル自体は香りと言うか「大地のミルク」のような懐かしい味が前面に出て、バターをつけるのも憚れるほど旨味があった。まさしくこれは、シラーの歓喜の歌の「地球の、自然の乳房から」なのだ。シュパーゲルは、男性名詞だが女性名詞の大地に生える。聖霊降臨祭のシュパーゲルは、だから精霊に満ち溢れ精気が漲り素晴らしい。



参照:
旬のフェンネル [ 料理 ] / 2005-03-21
シュパーゲル研究 [ 料理 ] / 2005-05-10
コメント (4)
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