先日のルーヴァーの旅で寄り道をしたのが下流の中部モーゼルの町ヴェーレンであった。観光地であるベルンカステルの行政圏には海外で有名な醸造所も多い。中部モーゼルの軽快な酸の効いたリースリングを楽しみたいと時々この地域にも買い付けに行く。今回はルーヴァーでの待ち合わせ時間もあって、最終的に一軒に絞った。
訪れたのは甘口リースリングで高名なヨハン・ヨゼフ・プリュム醸造所であった。前回訪れてから八年ほど経過しており、その間に代替わりもしていて、昨年のワインメッセで最も素晴らしい2007年産ワインを提供する醸造所と聞いていたので訪ねてみたかったのである。同じ年の可也素晴らしい辛口リースリングを購入したシュロース・サールシュタインと呼ばれるこれもモーゼル上流の醸造所のそれよりも素晴らしいとなるとどうしても気になった。
今回は先代である醸造の旦那さんにもはじめてお目に掛かって、クラシックなリースリング2007年産への見解を聞けた。さらに同じようにクラシックとされる2004年産を試飲購入出来て大変意義深かった。結論から言うと、ここの甘く醸造されたワインは、フランスワインによくあるようなご当地のやり方を貫いたドイツワインの代表的な名産品であると再認識した。
そのスレート土壌の苦さとバランスをとった酸と低い糖比重から出来上がるアルコール度の低い甘口は、長寿という付加価値と共に、その天然酵母を使った醸造法や古典的な葡萄栽培への取り組みとして頑なに伝統を継承している。更に先々代の取り組みや方法にも少し触れられて、それが伺えるだけでなく、そのリースリングの旨味にそれが表われている。
幾つかの地所を保持している。同じ「日時計」と呼ばれる地所もヴェーレンとツェルティンゲンの二箇所にあり、前回は辛口の後者を購入して今回は甘口の前者を購入した。前者の繊細な酸に対して、後者が密で力強いので甘口は遅摘み以上となっている。
ヴェーレンの日時計は、2007年産を試飲したが、ボディー感と綺麗さで間違いないものであった。1959年産に匹敵すると言うので、カビネットながら暫らく寝かすために購入した。なかなか熟成も酸の分解も進まなかった秋の十月中旬の収穫であったようだ。
その前に、グーツヴァインである最も単純な甘口を試飲した。これはそのもの酵母臭が強く、それを嗅ぐとご料人さんに諭された。
「それは、匂いを嗅ぐものでなくて、食事にごっくんと飲むものよ」
「それは分かっているんだけど、これは消えますかね?」と質問すると、「一年ぐらいかな」と言われた。
甘口のワインは、所詮辛口の高アルコールのような香りで楽しむものではなく、冷やしても旨ければそれで良かろう。
その後に試した2004年産のグラッハの地所「天国」は既に薄くなっており、野暮ったかったので、やはり「日時計」にした。価格は今や決して安くはないが、カビネットで十分であり、その喉越しの快適さと旨味で、なかなかこの価格ではこれほど良い甘口ワインは少ない。今年は倍以上の価格で二十年先に楽しむリースリングを地元で買ったが、半分の価格で十年間以上楽しめれば文句はない。それにこれは特産品なのである。
甘口リースリングと食事の相性を訊ねると、魚に蜂蜜を混ぜた辛しソースを付けると好いと言われた。彼女には嘗てレストランを紹介して貰った事があるのでその推薦は信頼出来る。なるほど簡単にバイエルンの芥子にフランスの蜂蜜を混ぜて使ってみたがなかなかいける。
最後に、屋号の省略した頭文字の読み方を聞いてみた。遠縁も含めて同じ妙字が多い中で正式名称は上記したが、J.J.と英語読みした。世界でそのように通っているかららしい。流石に輸出を中心に商売をしている名門醸造所である。教えられたように車を走らせて日時計を見に行った。
参照:
1997年の辛口リースリング 2004-11-11 | ワイン
We do not sell wine..... 2008-10-08 | マスメディア批評
香りの文化・味の文化 2008-06-07 | ワイン
真直ぐに焼け焦げた軌道 2009-09-29 | 試飲百景
たかが粘板岩されどスレート 2009-09-25 | ワイン
立ちはだかる一途な味覚 2009-09-27 | 試飲百景
イヴェントとなった猪肉 2009-09-23 | 料理
訪れたのは甘口リースリングで高名なヨハン・ヨゼフ・プリュム醸造所であった。前回訪れてから八年ほど経過しており、その間に代替わりもしていて、昨年のワインメッセで最も素晴らしい2007年産ワインを提供する醸造所と聞いていたので訪ねてみたかったのである。同じ年の可也素晴らしい辛口リースリングを購入したシュロース・サールシュタインと呼ばれるこれもモーゼル上流の醸造所のそれよりも素晴らしいとなるとどうしても気になった。
今回は先代である醸造の旦那さんにもはじめてお目に掛かって、クラシックなリースリング2007年産への見解を聞けた。さらに同じようにクラシックとされる2004年産を試飲購入出来て大変意義深かった。結論から言うと、ここの甘く醸造されたワインは、フランスワインによくあるようなご当地のやり方を貫いたドイツワインの代表的な名産品であると再認識した。
そのスレート土壌の苦さとバランスをとった酸と低い糖比重から出来上がるアルコール度の低い甘口は、長寿という付加価値と共に、その天然酵母を使った醸造法や古典的な葡萄栽培への取り組みとして頑なに伝統を継承している。更に先々代の取り組みや方法にも少し触れられて、それが伺えるだけでなく、そのリースリングの旨味にそれが表われている。
幾つかの地所を保持している。同じ「日時計」と呼ばれる地所もヴェーレンとツェルティンゲンの二箇所にあり、前回は辛口の後者を購入して今回は甘口の前者を購入した。前者の繊細な酸に対して、後者が密で力強いので甘口は遅摘み以上となっている。
ヴェーレンの日時計は、2007年産を試飲したが、ボディー感と綺麗さで間違いないものであった。1959年産に匹敵すると言うので、カビネットながら暫らく寝かすために購入した。なかなか熟成も酸の分解も進まなかった秋の十月中旬の収穫であったようだ。
その前に、グーツヴァインである最も単純な甘口を試飲した。これはそのもの酵母臭が強く、それを嗅ぐとご料人さんに諭された。
「それは、匂いを嗅ぐものでなくて、食事にごっくんと飲むものよ」
「それは分かっているんだけど、これは消えますかね?」と質問すると、「一年ぐらいかな」と言われた。
甘口のワインは、所詮辛口の高アルコールのような香りで楽しむものではなく、冷やしても旨ければそれで良かろう。
その後に試した2004年産のグラッハの地所「天国」は既に薄くなっており、野暮ったかったので、やはり「日時計」にした。価格は今や決して安くはないが、カビネットで十分であり、その喉越しの快適さと旨味で、なかなかこの価格ではこれほど良い甘口ワインは少ない。今年は倍以上の価格で二十年先に楽しむリースリングを地元で買ったが、半分の価格で十年間以上楽しめれば文句はない。それにこれは特産品なのである。
甘口リースリングと食事の相性を訊ねると、魚に蜂蜜を混ぜた辛しソースを付けると好いと言われた。彼女には嘗てレストランを紹介して貰った事があるのでその推薦は信頼出来る。なるほど簡単にバイエルンの芥子にフランスの蜂蜜を混ぜて使ってみたがなかなかいける。
最後に、屋号の省略した頭文字の読み方を聞いてみた。遠縁も含めて同じ妙字が多い中で正式名称は上記したが、J.J.と英語読みした。世界でそのように通っているかららしい。流石に輸出を中心に商売をしている名門醸造所である。教えられたように車を走らせて日時計を見に行った。
参照:
1997年の辛口リースリング 2004-11-11 | ワイン
We do not sell wine..... 2008-10-08 | マスメディア批評
香りの文化・味の文化 2008-06-07 | ワイン
真直ぐに焼け焦げた軌道 2009-09-29 | 試飲百景
たかが粘板岩されどスレート 2009-09-25 | ワイン
立ちはだかる一途な味覚 2009-09-27 | 試飲百景
イヴェントとなった猪肉 2009-09-23 | 料理