はじめてフランクフルトのユダヤ博物館を訪れた。現在開催中のフランクフルト学派の展示を見るためであった。その内容はなかなか簡単に語れないが、フランクフルトへの途上で聞いたラジオの話題から書き始めよう。
合衆国の作家の書いた新しい本が話題になっていると言うのである。それは市民虐殺という観点から広島・長崎を例に挙げて、必ずしもユダヤ人虐殺が特別でないとする意見で、それをソヴィエトや中共等々の虐殺の歴史とも対応させている。要するにユダヤ人やシオニズム団体に言わせると相対化と非難される意見であるが、イデオロギーや政治の束縛を逃れて、どのような視点を確立出来るかと我々は問われているのである。
さてはじめて訪れた旧ロートシルト家住居跡に先代の遺言により1887年に創立された公共図書館跡が市の運営する博物館となっている。市立歌劇場の裏のマイン河を臨む土手に立っている。予想はしていたが入口には飛行場と同じようなチェックがあり、金物をポケットから出さなければいけない。
火曜日の午前中であり殆ど訪れるものはいなかったが、特別展示内容はフランクフルトシューレについて少なくともなんらかの知識がないととても把握出来ない内容であった。ホルクハイマーやアドルノ等を主とした合衆国からの帰国組みがアデナウワー政権での連邦共和国の民主主義の基礎作りをした課程を、1968年革命への下敷きとして当時の貴重な資料を元に思潮やその学術的な指向を描く形で展示してある。
特に興味深いのはマルキズムを基礎とした社会学であるフランクフルト学派の中でのシオニズムへの多様な対応であり、欧州におけるユダヤを研究することで、マルキズムが本来含有するアンチセミティズムの理論的解決に、そこから68年革命を経て更にパレスチナ解放へと進んだ極左思想などが自ずと導かれることだろう。
後の首相となったアデナウワー政権の経済相エアハールトが執った連邦共和国の経済政策とホルクハイム教授の協調や、共産主義から自らが自らを護る自衛軍と市民徴兵の考え方はこの時期に確立されたとされている。その文化的思想的背景には、研究者でもない限り容易に言及出来ないが、常設展示である欧州のユダヤ人、ユダヤの欧州を一望すれば直感的に認識できるかも知れない。
ユダヤと欧州はアドルノの思考そのものに複雑なのであるが、それはトーマス・マンのファウストス博士に描かれている通りである。そしてそれを更に複雑にしているもしくはこの関連で構造を与えているのは、フリーメーソンとユダヤの関係であるかも知れない。フリーメーソンの暗号をあしらい、ダヴィデの星を底にあしらったクリスタルグラスは、まさに万華鏡のようなめくるめく世界そのものである。
オバマ大統領の初訪日は迫っている。広島・長崎への公式訪問は全く予定されていないようだが、「贈与や相続を脱税」しようが金と議論は幾らあっても多過ぎることはないと思わせる社会構造を浮き彫りにする一日であった。なによりもインターコンチネンタルホテルのゲスト駐車料金は高い。
博物館で入場券を買うためにカウンターに行くと、入場料四ユーロの小銭がないかと諭される。五ユーロ紙幣しか持ち合わせていないと思ったからである。「ECカードで払うよ」というと、「それじゃ合わない、せめて20ユーロからでないと」とおばさんに言われる。ECカードには手数料が発生するとは思わないのだが、「(地獄の沙汰も金次第と思いながら)そうですか」と呆れると、後ろの親仁が笑っていた。フランクフルトこそは、金貸しユダヤ人が歴史的に形成した金融都市である。
参照:
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難しいのはセレクション 2009-10-23 | 雑感
芸能人の高額報酬を叱責 2007-12-28 | マスメディア批評
68年への総括の道程 2008-02-21 | 歴史・時事
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合衆国の作家の書いた新しい本が話題になっていると言うのである。それは市民虐殺という観点から広島・長崎を例に挙げて、必ずしもユダヤ人虐殺が特別でないとする意見で、それをソヴィエトや中共等々の虐殺の歴史とも対応させている。要するにユダヤ人やシオニズム団体に言わせると相対化と非難される意見であるが、イデオロギーや政治の束縛を逃れて、どのような視点を確立出来るかと我々は問われているのである。
さてはじめて訪れた旧ロートシルト家住居跡に先代の遺言により1887年に創立された公共図書館跡が市の運営する博物館となっている。市立歌劇場の裏のマイン河を臨む土手に立っている。予想はしていたが入口には飛行場と同じようなチェックがあり、金物をポケットから出さなければいけない。
火曜日の午前中であり殆ど訪れるものはいなかったが、特別展示内容はフランクフルトシューレについて少なくともなんらかの知識がないととても把握出来ない内容であった。ホルクハイマーやアドルノ等を主とした合衆国からの帰国組みがアデナウワー政権での連邦共和国の民主主義の基礎作りをした課程を、1968年革命への下敷きとして当時の貴重な資料を元に思潮やその学術的な指向を描く形で展示してある。
特に興味深いのはマルキズムを基礎とした社会学であるフランクフルト学派の中でのシオニズムへの多様な対応であり、欧州におけるユダヤを研究することで、マルキズムが本来含有するアンチセミティズムの理論的解決に、そこから68年革命を経て更にパレスチナ解放へと進んだ極左思想などが自ずと導かれることだろう。
後の首相となったアデナウワー政権の経済相エアハールトが執った連邦共和国の経済政策とホルクハイム教授の協調や、共産主義から自らが自らを護る自衛軍と市民徴兵の考え方はこの時期に確立されたとされている。その文化的思想的背景には、研究者でもない限り容易に言及出来ないが、常設展示である欧州のユダヤ人、ユダヤの欧州を一望すれば直感的に認識できるかも知れない。
ユダヤと欧州はアドルノの思考そのものに複雑なのであるが、それはトーマス・マンのファウストス博士に描かれている通りである。そしてそれを更に複雑にしているもしくはこの関連で構造を与えているのは、フリーメーソンとユダヤの関係であるかも知れない。フリーメーソンの暗号をあしらい、ダヴィデの星を底にあしらったクリスタルグラスは、まさに万華鏡のようなめくるめく世界そのものである。
オバマ大統領の初訪日は迫っている。広島・長崎への公式訪問は全く予定されていないようだが、「贈与や相続を脱税」しようが金と議論は幾らあっても多過ぎることはないと思わせる社会構造を浮き彫りにする一日であった。なによりもインターコンチネンタルホテルのゲスト駐車料金は高い。
博物館で入場券を買うためにカウンターに行くと、入場料四ユーロの小銭がないかと諭される。五ユーロ紙幣しか持ち合わせていないと思ったからである。「ECカードで払うよ」というと、「それじゃ合わない、せめて20ユーロからでないと」とおばさんに言われる。ECカードには手数料が発生するとは思わないのだが、「(地獄の沙汰も金次第と思いながら)そうですか」と呆れると、後ろの親仁が笑っていた。フランクフルトこそは、金貸しユダヤ人が歴史的に形成した金融都市である。
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