Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

マスク舞踏会の夜

2020-09-23 | 文化一般
スペインのマドリッドはロックダウンとなった。その日のオペラ劇場で大きなプロテストが起こった。SNSにヴィデオや新聞紙上にも沢山の記事が載っている。フランクフルターアルゲマイネ新聞文化欄の右肩には、階級闘争の形としても扱っている。スペイン左翼の敗北を背景にしているとして、彼らはスペイン内乱前の1931年の第二共和国旗を掲げるのだとある。

そもそもプロテストは天井桟敷から起こった。あまりにも列に詰め込まれている人々が全くソーシャルディスタンシングされていないと声をあげ、先ず劇場側が非を認めて払い戻しを認めた。実際には当局の規制では定員の75%まで入場可であったが、あまりにも密になるので51.5%に減員してあったとされる。そして平土間も後方は兎も角前半の齧り付きは可也込み合っている。ヴィデオで見る限り、本当の天井桟敷には誰もおらず、前に詰めている感じもするが、どのように席が決まっているのかは分からない。

そして新聞にあるように声を聴きに来る通はそこにいる訳で、天井桟敷席は通人向けの場所である。しかし、ここ王の劇場ではやはり席によって社会層が異なるという事があるようで、一等席は239ユーロとされる。そこには左翼のルサンティマンがあるとされる。

で結局、二度三度と再開されながら妨害でキャンセルとなった。新聞には、表に出ろと叫んだのは当日からのロックダウンを決めたそこに居合わせた政治家への野次だったとされている。因みに上演されようとしていたのはヴェルディ作曲「仮面舞踏会」だった。まさしくポリティックパワーを描いた作曲家であった。

しかしこれはまさにマスクをして五割以上に詰め込もうとするネオリベラリズムへの反旗でもあって多くの人達の共感を得ると思う。ベルリンの市井のクロイツベルクでは他の地域の何倍の新感染指数が問題になっている。その地域をロックダウンしなければ他の地域へと広がってドイツの首都はヴィーンの様に閉鎖されるように成るかもしれない。今ここで規制を強めないと制御が効かなくなる。

チューリッヒでもよりによって合唱オペラとされる「ボリスゴドノフ」が合唱と管弦楽はリモートで中継されてスピーカーから流れるというもので、合唱に関しては視覚的に満足な結果とはならなかった様だ。スイスも無理してマスクまでさせて観劇がなされている。もうそろそろ暴れる聴衆が出てきても良いのではないか。若しくはもう誰も来なくなるだろう。11月からのベルリンの情景を予想させるに十分である。

今各地で行われている文化活動という名の興行は愈々多くの人に嫌悪を与えるようになるかもしれない。それはこうした訪問者から反旗を翻していくからである。毎日混んだ地下鉄で通い、安い券の為に並ぶ熱心な人たち、彼らの足が遠のく。エンターティメントとして劇場を訪れる稼ぎのある高価な席に座る人たちは態々マスクまでしてそんなところには行かない。収益性を上げようと画策すればするほど会場に空席が目立ってくるだろう。

「プロアルテ」などの高価なギャラを払って、高価な価格で売るような興行師主催の出し物は席を減らすのに躊躇している。商売にはならないからである。結局キャンセルになる可能性が高い。次の企画を出して集金しないことには返金が出来ない興業師も出てきているだろう。秋から年末にかけて倒産なども増えるかもしれない。

11月からのバーデンバーデン祝祭劇場での催し物の実施はどのようになるのか分からない。しかし少なくとも支配人スタムパは、「興業の為の興行はしない、そうではなくて、音楽に、作曲家に、演奏家に一心に耳を傾けるために催すのだ。」と言い放った。実際は分からない、しかしこれだけでも力を貸したいと思わせる。



参照:
肺癌のようなコロナ空咳 2020-03-20 | アウトドーア・環境
落ち着き払ったメータ指揮 2019-04-16 | マスメディア批評
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