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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

肢体がスルッ鼻がプルン

2007-05-16 | 料理
お蔭様で、未だに飢餓地獄に落ちたことはない。それでも、今日の食事な様なものを口にせずに終わるような事があるならば、どんなにか不幸なことかと思う。煮汁ともども僅か三ユーロで、腹一杯に、この世で最も繊細な味を体験出来るのだ。

パリの三ツ星レストランであろうが、ザウマーゲンを絶賛するポールボキューズであろうが、これほどの味覚は創造出来ないのである。何千ユーロを一晩の食事に費やしてもこれほどの味覚を体験出来ないのである。哀れな守銭奴達よ、俗物達よ、精々、自ずからの感覚を騙して、つまらないものを有り難って貪りつきなさい。

塩コショウを溶かして塗すためのこの煮汁は、コラーゲンたっぷりで、一度暖めて置いておくと常温で直ぐにゼラチンとなってしまうほどである。本日は、鼻と頬の肉を特別に楽しむ。

塩コショウ以外に調味料など何も要らないのである。ただただ、豚肉の繊細な味に集中すると、それは殆ど官能の世界に至るのである。鼻のあの弾力、頬の霜降り、様々な食感を堪能出来るのだ。

正直に思う。調味料を多用する食事などは、食文化レヴェルが低いのである。美味いものには調味料などは要らない。

それに合わせて、現在市場に出ている2006年度産最高級の辛口リースリングを試す。これまた、フランス最高級のパフュームの微かな香りが、草生して蜂蜜の滴る花畑に漂う。謝肉祭湯豚に、これほど見事な飲み物があるだろうか?

しかしどんなに高級なリースリングワインにも引けをとらない、繊細で穏やかな味覚がこの料理である。この世にこれほどの味覚は無いのである。グルメの馬鹿者たちよ、求めるものこんなに身近にあるのだ。

このワイン、これまた一筋縄ではいかない。これほどまでに味の核が無いワインは珍しい。幾らその実体を捉えようとしても、するりと腕から逃れてしまう、透けたベールを裸体に絡ませたニンフの様なワインなのである。刻々とその姿は変容して、そのしなやかな肢体に触れようとすると、手元に残るのはその薄いベールのような羽衣だけなのである。

再び、燻らして鼻を近づけると、突然媚びたような色香を放つかと思うと、たちまち遠ざかり、どうしても掴みきれないのである。手元のグラスに永遠の憧憬を一身に吸収しながら、ますますこちらの歓心を煽り、官能へと誘うのである。どうしたものか?

その価格だけでは無く、このワインを見つけて買える労働者は居ない、しかし、この豚煮を器を持って煮汁ごと買いに行けない労働者も居ないのである。なにも特別に腹を空かして貪りつく必要も無い、市場価値とはそもそもこうしたものなのである。



参照:
そして鼻の穴が残った [ 料理 ] / 2005-08-04
風邪ひきの時の滋養 [ 料理 ] / 2007-02-07

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6 コメント

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Unknown (shamon)
2007-05-16 08:54:13
こんにちは^^。

>美味いものには調味料などは要らない。
これは同感です。
炊きたてのご飯で握る塩おにぎりが
私にはこの世で一番美味しい食事です。

日本にはマヨラーという何にでもマヨネーズを
かけて食べる嗜好の人たちがいます。
人の好みはそれぞれですが、
素材を選ばない単一調味料の多用は
本末転倒に感じます。

>辛口リースリング
よいですね
日本はブルゴーニュ人気で
ドイツワインの影が薄いです。
手ごろでおいしい辛口リースリングは
ネットでもなかなか見つかりません。
今の季節、飲むには最適なのに。
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材料の味を如何に際立たせるか (pfaelzerwein)
2007-05-16 15:09:58
「炊きたてのご飯で握る塩おにぎり」-なるほど、これは長らく忘れていました。あの米の味は、日本国内以外には存在しないです。ジャポニカ米と呼ばれるものは代用米以外の何物でもないです。だから、私には米と言えばインド・タイ産がなんと言ってもも最高なのです。

材料の味を如何に際立たせるか。これは日本食の本義と呼ばれるのですが、なんの料理でもそうですね。さもなければ、様々な食感の工業製品に、適当な人工調味料をかけて食べておけば良い。

辛口リースリングの購入は、緑屋さんが結構上手くされています。関西と関東の市場では異なるでしょうが参考になるでしょう。それでも旬の良いものはなかなか入手できないから、態々買い付けに来られるのですね。また、ここの試飲報告を見ても判るとおり、その中でも一番素晴らしいものを入手するのは、地元に居ても精力と資金を消費します。これはどこのワインでもそうですね。

土曜日はブルゴーニュからのお客さん達と過ごす予定です。
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是非レシピを! (緑家)
2007-05-16 22:32:31
pfaelzerweinさん、こんばんは。
何だか美味しそうなもの食べておられますね。Schweinのどのあたりの肉なんですか?ウチでも出来ますか?貴兄だけが楽しんでいるのはちょっと悔しいですね。是非レシピをご教示願います。

> それに合わせて、現在市場に出ている2006年度産最高級の辛口リースリングを試す

これは何ですか?ひょっとしてBWのホーエンモルゲンでしょうか?

> 美味いものには調味料などは要らない

私も調味料を極力排除するようにしていますが、これは専ら健康のためでして、でもそういう中でも確かに素材の味そのものに感銘を受けることもしばしばであります。

それにしても市場価格の徒然なる様には諸行無常の感があります。すいません、久しぶりにリースリングを飲んで酔っ払ってしまいました。意味不明です。
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これまた (Seedsbook)
2007-05-17 02:27:09
おいしそうなものをお召し上がりですね。

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…私は不幸者? (うさ)
2007-05-17 02:27:25
こんにちは~!
これが、予告の美味しい食べ物ですねっ!

そんなに美味しいんですか?
…是非食べてみたいものだけど。
これこそ現地に行かないと食べられないものなんでしょうね。
う~ん。一生食べっぱぐれてしまうんでしょうか…。

私もとりわけ塩味が濃いのがダメ。
で、素材の味を楽しみたい派なので、そそられますね~。
あ。勿論、ワインにも。ウフフッ。
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解体百書、恥じらいは禁物、毎日食べれる訳では無い (pfaelzerwein)
2007-05-17 06:18:02
緑家さん、相当するレシピーは豚の解体百書です。何もかも使った後で、脳みそも黄色のソーセージに混ぜた後で耳も使った後で、残るのが鼻とかほっぺたとかです。

BWのホーエンモルゲンで芯の無いのがなんともそそります。緑屋さん好みのアロマを十分に確認する一方、後味が残らないのが私にも気持ち良い。水のような最初の当たりがMCの格落ちにも似ています。これが、COマイスターも面白いのではないかと言ってました。BJのウンゲホイヤーより上のも似ています。

その特徴が、薄味の素材の味に似ていると言ったら出来過ぎでしょうか?



Seedsbookさん、これまた、お恥ずかしい。しかし、美味いものを喰うには恥じらいは禁物です。



うささん、オイシイヨ~。それも、ワイン酒場などでも水曜日とかにしかあたらないんですね。そのように、ユダヤ教の歴史から、の曜日が決まっていますから、毎日食べれる訳では無いのですね。散髪屋の休みの月曜と同じです。

しかし上の肉屋は、月曜日に殺るようです。こんなに上等のワインが合うとは思わなかったので、ウハウハです。

ほらほら、そそられますね~
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