石井裕也監督がこれだけの大作を任されて、引き受けた。もう後戻りはできない。もちろん、失敗は許されない。昨年の映画賞を総なめした『舟を編む』の後、今年は家族の問題を描く『ぼくたちの家族』を撮った。どちらも、小さな話だった。だが、それまでの彼の映画から大きく踏み出す作品だった。もちろん前者は誰もが納得の傑作だ。だが、後者はとても癖のある作品で観客を選ぶ。だが、彼はそこで観客におもねらない。同じように自 . . . 本文を読む
老夫婦の話だ。震災とその後に起きた原発事故によってすべてを失ってしまった。先日見た映画『おだやかな日常』と同じように、震災直後からスタートする。厳密にはこの芝居は、震災から5日後の夕刻だが、まだ、状況も明確にならない状態で、不安と混乱の中にある、という意味では同じだろう。原発の40キロ圏に位置する酪農農家が舞台となる。彼らの過ごした3つの時間が描かれる。
プロローグのエピソードが素晴らしい。原発 . . . 本文を読む
この作品にはタイトルがない。チラシには大きく「劇場を舞台にした二つの作品を上演します」とある。だが、その作品のタイトルはどこにも書かれていない。舞台編『ヒーローに見えない男 缶コーヒーを持つ男』、客席編『椅子に座る女 椅子を並べる男』と、書かれてあるから、これがタイトルなのかもしれないけど、それはあくまでも便宜上のものでしかないことはそのそっけなさから、明らかなことだろう。そう言えば、演出のクレジ . . . 本文を読む
こういう軽い小説ばかり読んでいると、重量級の作品が読めなくなるかも、なんて心配するほどに、読みやすい。400頁ほどの作品が、2日ほどで読める。(もちろん、基本は電車の往復2時間だ)1時間で100ページというのは、かなり早い。先が読める話で、おきまりのパターン展開から一歩も踏み出さない。わかりやすいし、何も考えなくていい。でも、楽しいし、ちょっと泣かせる。あざといし、うそくさい、というのと紙一重だが . . . 本文を読む