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なんと刺激的なタイトルだろう。攻撃的で過激な鈴江さんがこのタイトルからどんな話を紡ぐのか、期待は高まる。
なんとこれは2時間の作品である。しかもアフタートークもある。平日の夜に。だから2時間30分。芝居だけでなくすべてが怒濤の展開。この「小劇場ならでは」の贅沢な時間を満喫する。満員の狭い劇場で(ウイングフィールド)これだけのキャストが暴れて、終演後には演出のペーター・ゲスナーにこの芝居の作家、鈴江俊郎、さらには先日鈴江作品(『おつかれ山さん』)を演出したばかりの土橋淳志を迎えたトークと至れり尽せり。
冒頭のドイツ大使館の雑踏状態からスタートして、亡命を試みる劇作家とその付き添いでやってきた義姉(このバカバカしい組み合わせは何!)が大使館職員(課長ではなく課長代理)との面談をするという、お話本題にいきなり突入。あれよあれよという間にお話の中に引き込まれていく。最初に書いたように怒濤の展開なのである。何度かの群衆シーンを挟んでラストまで一気に見せてくれる。しかも歌やダンスまである。客席の観客まで巻き込んでの、もう何がなんだかわからない混沌。問題となっているのは福井ではなく「ぷくい」。福井の高校演劇ではなく原発、だけではなく。さらにはタイトルにあるのは『日本』ではなく『ニッポン』。喜劇は一歩間違えば悲劇になる。
だいたいこの男、ドイツ大使館に駆け込み「日本からドイツに亡命したい、」とか言い出す。そんなところからこのお話は始まるのである。何がなんだか、はその時点から極まっている。メインキャストの3人のまるできちんと絡み合わない会話はそれぞれが自分の主張を一方的にするばかり。主人公である劇作家はもちろん鈴江さんそのもので、言いたい放題。福井高校の演劇部の事件を描いた『明日のハナコ』の続編のような立ち位置から始まり、どこまでも迷走していく。演出のペーターはこのカオスを楽しんでいる。
お話がどこまでも横滑りしていき、亡命の話だったけど、紆余曲折していく。もちろん気にはしない。ぶれない。あくまでもこの国(日本!)がいかにさまざまな問題を抱えているかに尽きる。こんな国から亡命したい。だけど僕たちはここに留まる。こんな国なのにやはりこの国が好きだから。ここには演出のペーター・ゲスナーとこの作品の作家の鈴江俊郎の日本への愛が溢れている。だからこそ、この国の体制を批判する。ラストでみんなが裸になって踊り出すシーンには唖然となる。だけどあれはこの芝居の幕切れに相応しい。