新城毅彦監督最新作。昨年秋の『矢野くんの普通の日々』からまだ3ヶ月でこの新作は公開される。あの前作はかなり残念な出来になったから今回は挽回して欲しいけど大丈夫か? と、かなり不安を抱えて見始めたのだが、身終えて、ほっとした。いや、とてもよかった。凄くよかった。
これは彼のデビュー作にしてこれまでの最高傑作である『ただ君を愛してる』を思わせる作品である。こんなにも定番メロドラマなのに納得させるのは出てくる人たちかみんないい人ばかりで、なのにそこには嘘くささがないからだ。ここまでベタな話なのに鼻白むことなく素直に認められる。それはこの映画がとても誠実な映画だからだ。
主人公のふたりの純愛にはぶれがない。最初から最後まで相手を愛してその想いは変わらない。揺らぐことすらなく,お互いを信じ切る。たとえ相手から別れを切り出されても、相手を恨まない。しっかり受け止めて生きる。
もちろん彼らはまだ若くて愚かだから、しかも(もちろん)相手を愛しているから本当のことを言わないで別れる。彼は骨髄性白血病に侵されて死ぬかもしれないなんて、彼女には言えない。だから拒絶する。彼女は子供ができたことを別れを切り出した彼には言えない。だから受け入れる。
そんな彼女を幼なじみの男はすべて丸ごと受け止める。
16歳の誕生日から始まる物語は20年の歳月をかけて描かれる。閏年生まれの彼女は、ほんとは4年に1度しか誕生日は来ない。4年をひとくくりにしてお話は何度も時間を前後させながら進展する。上白石萌歌が美しい。16歳から36歳までをずっと美しいまま演じた。彼女を受け止める赤楚衛二と中島裕翔もいい。この主人公である3人以外のすべての人たちが優しい。現実ではこんなことはないだろう。だけどこんなにいい人たちだから、周りにもいい人しか集まってこないのだ。そんなふうに思えるくらいに映画には説得力がある。ラストまで、とても誠実な展開をする、安易な泣かせは一切ない。なのに僕らは泣く。
映画は彼女の死も見せないし、彼の帰省もない。別れた後、再会はしない。大好きだから。一途な純愛を最期までお互いに貫く。こんなのはただのきれいごとだと受け入れない人もいるだろう。だけど新城毅彦はこのお話を信じて全力で描き切る。そして、これは彼の新しい代表作になる。