
痛快なクライムアクションなんかを期待したら、痛い目にあう。井筒和幸監督の最新作である。大阪を舞台にして、大手銀行の地下に眠る金塊を盗み出す6人の男たちを描く。確かに手に汗握る映画だ。だが、あまりに重くて暗い。それはある程度わかっていた話なのだが、ここまで痛快さのない映画をよくぞメジャー大作映画として作ったものだ。井筒監督に妥協はない。彼の思うおもしろい映画を作るために、心血を注ぐが、それは一般観客の求める緩くて、楽しい、安易な映画ではない。商業ベースにのせるための安易な妥協は一切ない。これだけのお金をつぎ込んで、作った映画だ。本当なら大ヒットを飛ばしてもらいたいところだが、これでは難しい。だが、彼はまるで気にも留めない。見に来ない奴がアホなだけだ、とでも言わんばかりのマイペースである。
それにしても、この映画の暗さは異常だ。負け犬たちが集まって、一世一代の大博打に臨むという基本線は明確だが、それが単純な娯楽活劇にはならない。簡単にはいかないのは承知の上だ。だが、ここまで、いろんなしがらみにかられて、紆余曲折を重ねることはない、と思うほどだ。6人の背景が絡み合ってややこしいことばかりが、生じる。本筋の銀行強盗の話がおざなりにされる勢いだ。だが、本筋よりもそんな背景のほうがおもしろい。
見ているうちに、いつのまにか、この群像劇に嵌っている。彼らがお互いの痛みと向き合いながら、それをいっしょになってカバーしながら、でも、どんどん倒れていく姿が描かれていく。果たして金塊までたどりつけるのか、それすら定かにはならない。ひとり、また、ひとりと離脱していく。しかも、金塊は重いし。ちゃんと盗み出せるか、さらには、逃げ遂せるのか。かなり無謀な計画で、最後なんか、あれでは逃げ切れまい、と思う。でも、全員死んでしまってもいい。彼らは自分たちの夢に殉じたからだ。
近頃めずらしいタイプの映画だ。70年代なら、こういうのはたくさんあったろう。だが、今の時代、映画の世界ですら、こういう夢は描かれない。だからこそ、そんな時代に喝を入れるため、この映画はある。井筒監督の熱い想いが、ちゃんと「今の観客」に伝わっただろうか。それもまた難しい。でも、これでいい、と僕は思う。ジグザグ走行のこの映画の夢見るロマンに酔う。
それにしても、この映画の暗さは異常だ。負け犬たちが集まって、一世一代の大博打に臨むという基本線は明確だが、それが単純な娯楽活劇にはならない。簡単にはいかないのは承知の上だ。だが、ここまで、いろんなしがらみにかられて、紆余曲折を重ねることはない、と思うほどだ。6人の背景が絡み合ってややこしいことばかりが、生じる。本筋の銀行強盗の話がおざなりにされる勢いだ。だが、本筋よりもそんな背景のほうがおもしろい。
見ているうちに、いつのまにか、この群像劇に嵌っている。彼らがお互いの痛みと向き合いながら、それをいっしょになってカバーしながら、でも、どんどん倒れていく姿が描かれていく。果たして金塊までたどりつけるのか、それすら定かにはならない。ひとり、また、ひとりと離脱していく。しかも、金塊は重いし。ちゃんと盗み出せるか、さらには、逃げ遂せるのか。かなり無謀な計画で、最後なんか、あれでは逃げ切れまい、と思う。でも、全員死んでしまってもいい。彼らは自分たちの夢に殉じたからだ。
近頃めずらしいタイプの映画だ。70年代なら、こういうのはたくさんあったろう。だが、今の時代、映画の世界ですら、こういう夢は描かれない。だからこそ、そんな時代に喝を入れるため、この映画はある。井筒監督の熱い想いが、ちゃんと「今の観客」に伝わっただろうか。それもまた難しい。でも、これでいい、と僕は思う。ジグザグ走行のこの映画の夢見るロマンに酔う。