
初めて読む作家である。生理痛が酷くて眠れない、とかいうことを延々と書くところから始まる。だから同棲していた男のところから家出して、自殺するために大阪に行く。えっ?それって何。
買ってきたレコード盤(『暗い日曜日』)に入っていたメモ。大阪にある優しい死に方を教えてくれる喫茶店、「待合室」。冗談みたいだが、沙保はそこに行く。そこで出会った不思議な初老の女性、律に導かれて一緒に暮らすことになる。
偶然この作品の前に読んでいた『30過ぎてロリータ着てますが、世界をオシャレに出来ますか?』と同じテーマを扱う。世界との違和感。生きづらさ。表面的には決して不幸だというわけじゃないけど、生きていて辛いから死にたいと思う。周囲からは甘えていると思われているだろうけど、本人は切実。自分を押さえ込み諦めるように穏やかな人生を生きる。それは地獄だ。
ハートウォーミングにしてはいささかビター。救われない。ふたりの前に同じように死にたいと願うゲイの男性、ミナトも加わる。この3人の緩やかな関係が描かれる。2話では沙保の、4話のラストで律の過去が描かれる。簡単ではないけど、沙保は少しずつ前進していく。ずっと暗い顔をしておどおど暮らしていたが、終盤には心理的に虐待していた母と向き合い、自分らしく生きることにするまでが描かれる。ラストは少し物足りない気もするけど、救われない世界に一条の光が射す瞬間までが描かれる。