習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『なまず』

2025-02-06 17:13:00 | 映画
これは一体なんだったのだろうか? まさかの空前絶後の不思議映画。オチもなくあり得ないエピソードがサラリと連鎖していく。何? と思ったらもう次のお話に移行している。監督はこれが長編デビューとなるイ・オクソプ。2018年の大阪アジアン映画祭グランプリ作品。2022年には日本公開されている。ようやくNetflixでも配信がスタートした。

このバカバカしい話が、あまりにさりげなく描かれていくからなぜか怖くて、だけどこれはもちろんホラーなんかじゃないしコメディでもない。先日見た『レオノールの脳内ヒプナゴジア』のようなめちゃくちゃな話でもない。あり得ないことが自然体で描かれる。

修道院だった施設を再利用した病院が舞台になる。そこで働いている看護師(イ・ジュヨン)とその無職の恋人、そして病院の副医院長(ムン・ソリ)が主人公。冒頭のセックス現場のレントゲン写真から始まり、陥没した道路の復旧作業まで。なまずが飛び跳ね地震が起きる。

こんなバカなことの自然な連鎖が冷静に描かれていく。レントゲン室でのセックスが撮影(レントゲンで!)されて流出する。誰が撮ったかということより誰が写っているか、が問題になる。その写真に写るお尻とペニスは自分たちだと思ったふたり。看護師の彼女は恥ずかしいから退職を覚悟して副医院長のところにいく。退職して明日から来ません、と言うために。

だけど何故か退職返上して翌日出勤すると、病院には誰もいない。副医院長だけが出勤していて、他の職員は全員が体調不良等で欠勤というまさかの事態。あの写真に写っているのが、自分だと思った医者や看護師たちが休んでいる? 

こんな展開からスタートしてシュールな話はどんどん続く。冒頭から続く女性のナレーションは主人公の女性だと思っていたらなんとそれがなまずだとわかったところからこのバカバカしい話はますますシュールになっていく。

恋人の指輪紛失事件や陥没の穴に落ちたり。わけのわからない出来事の連鎖に唖然とするばかり。しかもオチはない。それだけ。結局何がなんだったのだろう? わからないけど映画は終わる。89分の異次元体験。

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