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映画・演劇のレビュー

『バブルへGO! タイムマシンはドラム式』

2007-02-03 00:14:22 | 映画
とてもバカバカしい映画だ。でも、それが楽しい。単なるバカ騒ぎではなく、時代がバカ騒ぎしてたバブルの頃に入り込んで、そんなバカを辞めさせるために奮闘するのだが、そのためにまた大騒ぎする、というちょっと手の込んだ趣向の映画なのである。要するに映画全体が壮大なバカ騒ぎなのである。

 80年代後半、一見風俗の表層を軽く撫でたように見せて、正統派の青春映画を作り、若い世代の心をがっしり摑んだホイチョイプロダクションズ久々の新作である。彼らだからこそ分かるあの時代の気分を細部までとことんこだわり見事に見せてくれる。ガゼット感覚を映画自体のスタイルとして、それが時代を射抜く。そんな映画を殊更大仰に見せるのではなく、軽いノリでやってしまい娯楽活劇として仕上げることに成功した。さすがである。

 彼らのデビュー作『私をスキーに連れてって』はあの時代のイコンとして今も光輝いている。そして今では、古典として残っている。ユーミンを全編に流し、スキーというアイテムを最大限に利用して、遊び感覚で作られた映画は青春映画のあるべき姿をすべてその中に封じ込めた傑作となった。原田知世は可愛いし、若大将映画のノリをあの時代に再現してみせることにも成功したのだ。

 さて今回は、バブルという時代そのものをアイテムにして、思いっきり遊んでくれる。タイムマシンで17年前に行き、行方不明の母親(80年代のスーパーアイドル薬師丸ひろ子だ!)と、日本の未来を救う使命を受けた広末涼子が、浮かれてる場合ではないのに、一緒になって浮かれながら、阿部寛と90年の東京で冒険を繰り広げる。ドタバタの限りを尽くしバカバカしいことこの上ない。

 馬場康夫監督はすべて分かった上でこのノー天気な映画を作っている。こういうタッチの映画を作るのはかなり怖いことなのに、まるで気にしない。失敗したっていいや、というくらいの気分で久々の映画作りを楽しんでいるようだ。広末は最後、バブル崩壊を食い止め、2007年の今に帰って来る。すると、現在はどうなってるか?それは見てのお楽しみ。

 コメディーとして分類してしまいたくなるような映画なのだが、実はそう単純なものではなく、あらゆる要素を1本に詰め込んでジャンル分けなんて不可能にしてしまう魅力がある。

 17年前という古いんだか新しいんだかよく分からない微妙な時間を、時代劇感覚で捉えて、今との落差を驚きの連続で描く。ありえないと言うくらいにたった17年で世の中は凄い勢いで変わっている。バブルの時代という不思議な頃を少しデフォルメして、呆れるくらいにハイテンションに見せていく。こういう映画が作れてしまうというのって凄い。

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