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映画・演劇のレビュー

『カエル少年失踪殺人事件』

2012-11-09 20:45:56 | 映画
 なんとも不思議なタイトルの映画ではないか。「カエル少年ってなんだ?」 という興味からこの映画に魅かれた。しかも、少年が失踪して、殺されるのである。タイトルがストレートに映画の内容のすべてを説明している。もちろん映画はそのタイトルを裏切ることなくそのままの内容。

 5人の少年たちが走っていくシーンから始まる。田舎の素朴な風景の中、赤いマントをひるがえした坊主頭の少年と、その仲間たちが、止まることなく走っていく姿を延々と撮っていく。彼らはカエルを捕まえるために山の方に行く。そして、戻ってくることはなかった。この冒頭にシーンの醸し出す雰囲気が好きだ。とてもかわいい。だが、それはこの映画の中では一瞬の出来事で、その後この映画から彼らの姿は消える。そして殺伐とした話が続く。

 韓国で実際に起きた実話の映画化である。事件は今も未解決なままだ。なぜ、少年たちはいなくなったのか。失踪の謎を追いかける。だが、事件は迷宮入りする。さまざまな憶測や、事件を巡る捜査の状況が被害者の家族や、警察、マスコミ、事件を解明しようとする大学教授を通して描かれる。だが、いずれも空振りばかりで、犯人の検挙も、子供たちの消息も、わからないままどんどん時間だけが過ぎていく。

 映画はそんな関係者の姿を追う。同じように未解決の事件を追った映画『殺人の追憶』とよく似ている。前半のバカな大学教授と、その尻馬に乗るやらせのドキュメンタリーで一度は業界を追放された主人公の行動には腹が立つが、後半、彼が真実に迫るため、犯人を執拗に追いかける様は手に汗握る。犯人は特定されるが、時効が来て、未解決のまま、終わる。どこまでが実話なのかは、よくわからないが、終盤の犯人と目される男の不気味さ。凄惨な事件を平気で引き起こす様は、怖い。そして、子供たちを失った家族の話が胸を打つ。ドキュメンタリータッチで感情に溺れることなく淡々と見せていく2時間12分の緊張感はすごい。傑作とまでは言わないけど、とてもいい映画だ。
 

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