
この映画の原題は『ティラノザウルス』という。あまりにイメージが違いすぎるけど、そのままでは日本では伝わらない。でも、ここまで叙情的なタイトルもどうだかなぁ、と思う。映画は結構ハードな内容なのだ。甘いラブストーリーではない。人生に疲れた中年の男女が出会い、お互いの心の傷に塩を塗りつけるようにして、付き合う。優しさではない。でも、傷つけあうのが目的でもない。それよりなにより、もう充分に傷ついている。これ以上することはないし、出来ない。だが、これは支えあう、というのとは少し違う。
あまりに痛ましく、どうしようもない。だが、原因は自分にもある。映画はなかなかその理由をあかさない。相手にだけでなく、観客にさえ隠し続けるのだ。いつまでたっても彼らが何に傷ついて、今のような状態にあるのかは明かされない。
だが、別にそんなことはどうでもよい。今の彼らをただ見つめているだけで、ドキドキさせられる。これから先の彼らさえ見られたならいい。後戻りなんかできないのが、人生なのだから。そんなふうにさえ思わせるくらいに、これはいい映画なのだ。妻を亡くし、仕事もなく、酒に溺れて、自堕落な生活を送る中年男。裕福そうに見えて、不幸を抱え込む女。彼女の一見暴力的な夫も、実は、心身ともに弱い。この夫婦の関係がなぜこんなふうになったのかは、終盤に明かされ、思いもしないカタストロフに至る。
だが、そこまでいっても、主人公の男の抱える闇は明確にされない。妻を『ティラノザウルス』と呼んだこと。彼女に対する彼の態度。それは、もうひとりの主人公である女の、その夫への態度と重なる。夫婦がお互いにいっしょに生活しているのに、相手を嫌いではなく愛しているのに、でも、傷つけてしまい、どうしようもない状況になる。この映画が描く不幸はそんな不幸なのだ。難しい。
ラストの光明を、救いだと、捉えることも出来る。というか、そう捉えたい。だが、それすらも、先の見えない明かりだ。だが、そんな一条の光に支えられて人は生きる。
あまりに痛ましく、どうしようもない。だが、原因は自分にもある。映画はなかなかその理由をあかさない。相手にだけでなく、観客にさえ隠し続けるのだ。いつまでたっても彼らが何に傷ついて、今のような状態にあるのかは明かされない。
だが、別にそんなことはどうでもよい。今の彼らをただ見つめているだけで、ドキドキさせられる。これから先の彼らさえ見られたならいい。後戻りなんかできないのが、人生なのだから。そんなふうにさえ思わせるくらいに、これはいい映画なのだ。妻を亡くし、仕事もなく、酒に溺れて、自堕落な生活を送る中年男。裕福そうに見えて、不幸を抱え込む女。彼女の一見暴力的な夫も、実は、心身ともに弱い。この夫婦の関係がなぜこんなふうになったのかは、終盤に明かされ、思いもしないカタストロフに至る。
だが、そこまでいっても、主人公の男の抱える闇は明確にされない。妻を『ティラノザウルス』と呼んだこと。彼女に対する彼の態度。それは、もうひとりの主人公である女の、その夫への態度と重なる。夫婦がお互いにいっしょに生活しているのに、相手を嫌いではなく愛しているのに、でも、傷つけてしまい、どうしようもない状況になる。この映画が描く不幸はそんな不幸なのだ。難しい。
ラストの光明を、救いだと、捉えることも出来る。というか、そう捉えたい。だが、それすらも、先の見えない明かりだ。だが、そんな一条の光に支えられて人は生きる。