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映画・演劇のレビュー

刹那のバカンス『無尽灯』

2025-02-24 18:49:00 | 演劇
昨年のウイングカップにも参戦している刹那のバカンスの新作。関西の港から20分で着くところにある無人島(無尽灯)が舞台となる。(ここは友ヶ島がモデルか?、なぁ。昔、友ヶ島で高校の新入生宿泊研修をしていたので何度か行ったことがある。宿泊は加太だったけど)そこで毎年恒例になっているらしい高校の同窓会が開催される。下見にやって来た8人は島に取り残される。作、演出は那波七歩。

リアリズムからは遠く離れたドラマ展開に啞然とするが、どこ吹く風の堂々とした展開で最後まで押し切る。たしか昨年の『半壊の館』もそうだった。大胆な設定を堂々と見せていく。那波さんはきっと我が道を往く。

島に行くのにまるで街での合コンのような衣装。女の子たちはみんなハイヒールって何? 島でプチ同窓会をしたら帰りの船に乗り遅れて、帰れなくなる。しかも次は週末まで迎えの船は来ない。なのに彼らはまるでのんびりしている。これは一体何なのか。サバイバル劇ではなく、リゾート感覚。寝る場所も食糧もないのに、である。あり得ないのに平然としている。週末には迎えにくるからと。一応明日から仕事があるのに連絡もつかないと焦っているみたいだけど。

この悪夢の中で平然とする彼らは夢の中で立ち止まりそこで過ごす時間を楽しんでいるみたいだ。悪夢を楽しむって何?

灯台を探すというのも、だから何って感じ。タイムカプセルのエピソードも含めてあらゆることが中途半端に描かれる。ラストで再びファーストシーンに戻ってくるから、これは妄想の世界なのだろうが、だけどそれって何?

これは一見杜撰なお話の展開に見えるけどそれを敢えてやっている。島に取り残された8人の人間関係から彼らの形成する社会を現実世界の縮図として描こうとしたのか。(パンフにはそんな感じのことが書かれてある)ただあまりに作りが緩くてどこまでが作者の意図なのか、判別が難しいから謎。こんな不思議な迷宮に迷い込んで僕は戸惑ってしまう。当事者である彼らはそれを楽しんでいるみたいなのに。無人島で無尽灯を探す80分の旅。ここから逃れられない。

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