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映画・演劇のレビュー

津村記久子『水車小屋のネネ』

2025-02-24 08:19:00 | その他
485ページに及ぶ大長編である。2020年の5月から2022年の4月までかけて書かれた。新聞連載は2022年8月まで。2023年3月に出版されてベストセラーになった作品である。

たまたま読む本が無くて、高校の図書館で借りてきた。最初はなかなか話が進まないから、少しイライラするが、2話に入ったところからようやくこの作品世界に馴染めてきた。18歳の姉、理佐と8歳の妹、律がふたりだけで知らないところで暮らすことになる。高校を出たばかりの理佐が仕事を見つけ幼い妹の保護者となる。子どもに無関心な母は男を連れ込んで、その男は子どもを虐待する。そんな親元から逃げ出してふたりだけで生きることにする。

1981年を描く第1話は不安だらけのふたりの暮らしの始まりを描く。180ページもある。水車小屋のネネとの交流を通してふたりの物語が描かれていく。

2話は10年後、1991年。この先、10年ごとにお話は進む。2話からは聡が登場して話は新しい展開をする。だけどただの恋愛ものにはならない。それまでのペースを崩すことなくお話は動いていく。3話では中3の研司が律の前に現れる。彼の勉強をみる。聡は理佐と結婚する。

ここではゆっくり時間が流れていく。だからこの作品には500ページが必要なのだ。少しずつ新しい人がやって来る。中心にはネネとの交流があり、彼を通して全体が描かれる。ヨウムのネネはたくさんのことばを話し、まるで人間みたいに振る舞う。この小説には常にネネがいる。ネネは鳥なのに人のことばがわかるし、話せる。

お話の後半は律の語りになる。これは8歳だった彼女が48歳になるまでの物語だ。10年単位の話を読みながら、人の人生って何なのか、なんてことを思う。昨日の朝、中学時代からの友人と偶然道で出会った。久しぶりだった。もう50年も知り合ってから経つ。

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