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映画・演劇のレビュー

『レオノールの脳内ヒプナゴジア』

2025-02-04 20:24:00 | 映画
これはコメディ映画なのか? タイトルにある「ヒプナゴジア」って「半覚醒」という意味らしいが、奇想天外なお話だけど、ファンタジーというよりただのトホホ映画で、ただ呆れるばかり。真面目に見てたら疲れるばかりだ。こんなアホな映画を必ずしもおふざけしているわけでもなくかなり真面目に作るって何? コメディとして、窓から落ちてきたテレビで頭を打って意識不明になった老女が脳内で作りたかった映画を夢見る話、というところに落ち着いたなら納得するのだが、これはそんな単純な話ではない。

72歳の彼女は映画監督で、現役引退状態の今もお蔵入りした幻の企画の映画化(だけどそれは呆れるほどつまらない活劇)を望んでいた。それが頭を打って意識不明になることで現実(?)になるのだが、なんだか優しいファンタジーとして、上手く話が進むわけではない。

しかも終盤には、彼女が行方不明になり、本人は映画内に入り込んでしまう。途中からは映画のキャストの一員になり主人公を助けにいく。と、まぁこんな感じのやはりコメディタッチなのだが、かなりまさかの死があり、残酷な展開も。夢の映画には程遠いお話になる。

しかも現実世界でも病院のベッドから彼女消えてしまい院内は大騒ぎ、というのが描かれる。さらにはTVで放送中の映画に彼女が出ていることがわかり、息子はTVの中に入っていく、とか、バカにもほどがある展開も容赦なくある。そんなこんなの荒唐無稽がやりたい放題。もちろんここにはルールなんかない。思いつきであれこれする。ラストでは歌い出すし、『時をかける少女』の原田知世みたいに。みんなも踊り出してミュージカル!

もちろんなんでもありがダメというわけじゃないけど、ここまで野放図にやられたら見ている僕らは醒めてしまう。楽しいのは作り手側だけで観客は置き去りにされてしまうって、どうだかなぁと思う。とはいえ、このチープな世界に堪能して楽しめたらこれはこれで楽しいかもしれない。作者は故意にこういう世界を作っている確信犯である。これはフィリピンのまだ若い監督のデビュー作らしい。昨年テアトル梅田で公開してる時、行こうか迷った作品。もう配信されていた。配信で充分だったが、カルト映画として喜ぶ人も多々ありそう。否定はしない。呆れたけど。

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