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映画・演劇のレビュー

旦煙草吸『サネカズラ』

2024-09-22 19:48:00 | 演劇

久しぶりの旦煙草吸。毎回過激に刺激的な舞台を作っている葉兜ハルカが今回は何を見せてくれるのか、楽しみ。彼女たちの舞台を初めて見たのは2年前のウイングカップ参加作品だ。(『そっか』)見せ物小屋的なスタイルのアングラ芝居で懐かしい。今時こんな作品を作る人たちはいない。もちろん60年代の寺山修司を想起する。それを女の子たちが中心になってやるって凄いと思った。残念だったが、ウイングカップでは評価されなかったけど、心に残った。だから昨年もう一度見る機会があったから、再度ドキドキして劇場に向かう。ただその昨年の3月の『ポコ人』は残念な芝居だった。だけどその後の夏に見たでめきん(葉兜さんの別ユニット)による『きんぎょ箱』は悪くない。たくさんの作家たちによる短編集を葉兜演出で2部作にして見せてくれた。ある種の距離感が彼女の世界を反対に明確にするということなのか? だから今回も期待した。maaの楽曲(『雨を連れて』)にインスパイアされて、彼女を主演に迎えた歌劇というスタイルである。

 冒頭からワクワクさせられる。大人数による過激な歌劇は圧巻のスペクタクルだ。最初からマックス。「雨を連れて、君に逢いに行く」というコピーが作品世界のすべてを象徴する。ひとつの楽曲を題材にしてその世界を劇にするという試みは昔の歌謡映画でもお馴染みのことだ。だけど今回の作品はそれをストーリー性のあるドラマとして再構築し構成するのではなく、捩れた悪夢の連鎖として見せていく。
 
シンプルなお話は素直に進行せずに停滞して同じところをぐるぐる回る。悪夢は何度も繰り返される。失われた記憶を巡る物語。母親から「あなたには妹がいた、」と告げられるところから始まる。友人たちは彼女が記憶を取り戻すことを恐れる。雨の日の公園で何があったのか。実は行方不明の妹はもう死んでいる。何故彼女は死んでしまったのか。ストーリーを追うのではなく、この悪夢に身を浸す地獄めぐりが歌に乗って描かれる。90分の恐怖体験が何故か優しい世界を見せてくれる。次回も楽しみになる佳作。

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