なんと教科書に取り上げられている詩のアンソロジーである。戦後から今に至るまで、高校の教科書に掲載されてきたさまざまな詩を網羅した。確かにいずれも授業で何度か(何度も)やったことがある作品ばかりだ。
最初に掲載された年、掲載した教科書名が明記されている。なるほど、と思う。(何が「なるほど」だか?)時代の気分とその詩の世界を勝手にシンクロさせてしまう。そこから妄想までする。
中原中也の『一つのメルヘン』を教科書で読んだのは、たぶん高2の頃。すぐに詩集を購入して貪るように読んだことを覚えている。あの頃、中也と同じように30歳で死ぬ、と覚悟した。(なのにまだ生きているけど)
さまざまな思い出が去来する。この一冊の最後には谷川俊太郎の『「ネロ」について』という一文が取り上げられている。これも授業でやったことがある。というか、あの詩が好きすぎて、パリに行った時、メゾンラフィットの街まで行ってきたことがある。10代の谷川俊太郎の書いた詩は10代だった僕の心を揺さぶった。
今年の2年の最後の授業も谷川俊太郎である。『今日』が教科書に取り上げられていた。いい詩だ。ストレートに伝わる。生徒たちにもしっかり届いている。天国の谷川俊太郎さんに届いただろうか。今を生きる子どもたちがあなたの詩を待ち望んでいる。