習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

鯨井あめ『白紙を歩く』

2024-12-27 07:09:00 | その他
今回は高校生のふたりの女の子の友情物語。天才ランナーと作家希望のふたりが学校図書館司書室で出会う。

何気ない出会いから始まるさらりとした関係。まるで違う世界にいたふたりが何故か惹かれ合い、お互いを教え合う。怪我からインターハイを辞退して治療に励む風花。自分が何故走るのか、を考えるために本を読む。その本が何故か『走れメロス』。笑える。内容ではなくタイトルから手にしたみたいだ。たった20ページほどの短編なのになかなか読みきれない。80ページ(この小説は全体が280ページほど)を越えてもまだ読み終えてない。これはもしかして最後まで読み終わらないのか、と不安にすらなるけど、なんとか100ページを目前にしてようやく読破。で、読後のその答えは、「あまり面白くない」って。なんなのこれは! こんなバカな小説はない。しかもふざけている訳ではなく真剣。風花は走る目的が欲しいのだ。それが今の自分にはないから本から学ぼうとした。

そんな風花をモデルにして類は小説を書くことにする。風花から許可を得て、取材の名のもとに毎週2回親戚のブックカフェで会う。ようやく書き終えた彼女をモデルにした小説を渡すが、風花は読まない。自分をモデルにした小説なのに読めない。字がたくさん書いてあって眠くなるし、って何? ふざけている訳ではなく彼女は本気で活字が苦手だから。読めないし、読んでいると眠くなる。だから小説を書く類のことを尊敬する。

こんなバカな関係性をまともに描く。いつまで経ってもふたりは交わらない。まるで別世界の存在。だけどお互い気になっている。こんな関係がある。そんな関係を描いていく。ラストまで変わらない。

最後のマラソン大会の話。そこで優勝するはずだった風花が類と最後尾で歩くのが楽しい。風花は走らない選択だってある、と思う。

だからといってラストでふたりは分かり合えるのではない。やはり最後まで平行線のままだ。だけどそれでいい。こんな関係だってある。白紙になる。白紙を歩く。そこならなんでも書ける。世の中にはいろんな価値観があり、そんな中で人は自分らしく生きたらいい。誰かに合わすのではなく、マイペースでいい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2024 外国映画ベストテン | トップ | 2024 配信映画ベストテン »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。