ドアの向こう

日々のメモ書き 

思いがけない喜び

2005-05-01 | 犬のブロンコ・ダン

 わかれ際の 「犬はお好きですか?」
「えぇ、好きです。むかし飼ったことがあります」
たったこれだけの簡単なやりとり。
 夫と、仕事がらみで知り合ったI氏の会話である。

 話しはこれだけで終わらなかった。
 
 翌1988年1月31日、陽気なチャイムが鳴った。
おもてに大柄で柔和な紳士が立っている。
「犬を連れてきました」
 何も聞いてない。突然のことで、家族はあっけにとられている。
それらしき荷物もなく玄関に入ってきた。

 やがて上着のポケットにさわり視線を集めると、まるで手品師のようなあざやかさで、取り出したのはオモチャのような子いぬ。
 片方の手のひらにちょこんと載せてみせた。

 わあ、かわいい! ぬれたようなつぶらな瞳がじっと見つめる。
くんくん鼻を鳴らしてる。ちっちゃいのがうごいてる! 
何かまさぐるようなしぐさ。いとしさに釘付けになる。
 犬は好かないと言ってた母まで夢中になった。

 「ほら、こんなに延びるんですよ。」と首周りをつまんでみせる。
皮膚はずるずると自在にうごいた。狭いところに潜りやすいためだ。ご先祖はネズミを捕っていたらしい。

 世話をする暇もないし。高額なペット犬のことも耳にしていた。
お金を出してまで飼う気持ちもないな… しかし、
それを言えるだろうか。
 家族は顔を見合わせ、目の前のやんちゃな瞳と心の中で格闘していた。
 
すると「良かったら差しあげます、世話していただけますか?」
 「もちろんです。よろしいんですか」
またまた、唐突なご厚意をお受けしたのである。
 
 Iさんにはいつもびっくりさせられる。
いきなり庭箱を贈られ、カナリアを飼うことになってしまった、昔のことも思い出す。
 
 トイマンテェスター・テリア 
(ブラック&タン。短毛。成犬でも3.5キロ) 
なまえはホクセン・リバーズ・ブロンコ・ダン
 こうして新しい家族は、みんなを虜にした。
 あまりに長い名前、愛称Rugbyに決める。
思いがけない小さな贈り物は、家族をしあわせにし、一つにまとめる大きな力をもっていた。
コメント
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