ドアの向こう

日々のメモ書き 

ある時間

2007-07-04 | 道すがら

  民家園から北へ車で10分ほど移動した。  スロープを歩くと、 木の間隠れに 斜面林を背にして重厚な屋敷が見える。  絹糸のような雨と、 七夕飾りが出迎えた。

  ここは 旧坂東家住宅   ~昔の家・昔のくらし~ がわかる。
  木造平屋、 寄棟、 茅葺、 床面積87坪(約286㎡)。 解体時に発見された墨書銘から、 安政4年(1857)に建てられたことがわかる。  この地、加田屋新田を開発し、 見沼代用水の見回り役や名主役などをつとめた。 式台(玄関)をもつ格式の高い住宅である。 
  土間、上がり框、 襖変わりの板戸、 欄間のかざり、 長持、 タンス。 長い廊下。 奥座敷。  住宅解体後の発掘調査で、 三島手象嵌土瓶 に入った一分銀400枚(百両相当)が座敷押入下の土中より見つかった。 それらも公開している。 写真はこちら  

 囲炉裏に火が入り、 煙がたちのぼる。 つられて天井を見あげる。  屋根裏に煤竹ススダケがみえ、 古い家を解体するときけば、 骨董屋や竿師や指物屋さんがやってきたことなど思い出した。  永いこと煤にあぶられて堅くしまる、 弾力もあるので釣り竿に適している。  強度を増した竹の、 飴いろの艶も、 得も言われぬ彩りなど魅力的で、 篠笛や花入れとしても利用される。  たのしき話が延々尽きない。 とんでもない方向にとんでいる。 

  我が足裏もはっきりと、 土間のタタキを覚えている。 凸凹が土踏まずを刺激して気持ちよかったこと、 夏のヒンヤリした感じ。  いとこ達と裸足で駆けぬけた日々を懐かしむ…  青いアーモンドのような榧の実も、 雨にぬれて光っている。 屋敷の周りをめぐった。  厠、 湯殿、 勝手、 味噌部屋、 厩、 薪小屋  …

  それにしても、 みごとな笹飾り、 真菰を編んで
つくる一対の馬も、 くす玉も、 折り紙も…… 

  ☆ ☆ ☆

  7月13日から8月15日まで
  「坂東家の盆棚飾り」
 (併設の 見沼くらしっく館)

   あの、 精霊棚だろうか 
  楽しみにしている

 

                     カヤの実  

   

 

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蓮華

2007-07-04 | 道すがら

  
  雨で、 衝突しそうなふたりが民家園にいく。 江戸時代の建物など7棟、 移築復元した野外博物館である。  寄棟茅葺屋根の長屋門など郷愁を誘った。 
 そして、 池一面に古代蓮が咲いている。  

 

              

    
  初夏のころ、 蓮はその宿根から若葉を出して、 うすい緑色の葉を水面に張りつけたように浮かべる。 銭葉ゼニハともいう。  やがて、 水面から茎が立ちあがり、 巻葉(細く巻いている) となり、 のちにひらくそうだ。  知らなかった蓮の手順を、 リプレーするように味わった。  
   

        浮葉巻葉立葉折葉とはちすらし         素堂
        波なりにゆらるゝ蓮の浮葉哉          子規

 
(季語… 蓮、 蓮華、 はちす、 蓮の花、 白蓮ビャクレン、 紅蓮ベニバス、 蓮見、 蓮見船、 蓮池 

 

           

 

   黎明の雨はらはらと蓮の花        虚子

  匂うような花びら…  なんとふさわしい微雨。  やわらかく煙るようだ。  蓮華座に微笑む。 
  ここに 来てよかった。
  雨は、 葉のうえで 休むと水晶珠になった。  風がそよいで、 扁平な楕円になり、 不安気なレンズができた。  そこに、 梅雨空も、 今朝の気持ちも、 写している。 
  
  こぼれ落ちる花を拾いたいが、 足場がぬかるんで。  見渡すと、 小さな種が青い蜂巣に、 できかかっているのもある。  秋になれば黒い実をとって食べたね。  遙かむかしに。 
  民家園と蓮の花。  こころもいつしか解けている。 ここから 坂東家は遠くない。

 メモ ・旧浦和市農業協同組合三室支所倉庫 大谷石と漆喰の土蔵造りの石蔵。 大正8年   ・旧高野家住宅  煎餅店 江戸末期  合理的な型抜き器、 転がすだけで何十枚も一度に型が取れる、すごい! 焼き網。  ・旧綿貫家住宅  雑貨や砂糖など扱う店 江戸末期~明治初期  虫籠窓が特徴。 母もここで砂糖を買っていた。  ・旧野口家住宅  田の字型四間取り。 ・旧武笠家表門 天明3年(1783)、今から224年まえに建立。 ・旧中島家穀櫃  内部を3等分に仕切り、 落とし板をスライドさせて収納する仕組み 江戸後期  見たことがある。 ・旧蓮見家住宅 約250年前に建てられた、さいたま市内で一番古い民家。 江戸中期。 「ししまど」という格子窓は 猪などが入らぬように。

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