心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

二束の草鞋を脱ぐ

2014-07-19 23:13:05 | Weblog

 いつになったら梅雨が明けるのだろうと思いながら、手許にある「日本の七十二候」を開くと、きょうは第十一節「小暑」の第三十三候「鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)」なのだそうです。鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える意。森の中から飛び出してきそうな、そんな風景が見えてきます。来週半ばには、1年でもっとも暑さの厳しい「大暑」を迎えます。
 そんな暑い夏の盛りの8月に、私は生まれました。いまから64年前のことです。計画どおりなら、再雇用制度は希望していないので、来年3月にめでたく定年退職の予定ですが、週末の会議で、もう1期(2年間)働けとのお達しがありました。ならば、せめて社員と経営陣の二束草鞋は脱がせてほしいと、昨日、退職願を提出しました。常勤という意味では大きく変わることはないはずなのに、これまで社員の退職願を受ける側にいた私が、長年勤めた職場に退職願を提出する。なんとも妙な気もいたします。その夜は家内と細やかなお祝いをしました。
 その後も寝つかれない夜を過ごしました。40数年前、採用試験を受けた時の仲間には1、2年歳上の者もいて、既に定年退職している者がいます。不幸に亡くなった者もいます。組合活動に汗をかいた時期、社内結婚した時期、政争に振り回された時期、何人かのトップと苦楽を共にした時期、......40年間の出来事が走馬灯のように浮かんでは消えていきました。夜が明ける頃、私に課せられた仕事をきちんと仕上げて仕事人生に終止符を打とう、そう自分に言い聞かせて目覚めました。
 話題を変えましょう。1週間を振り返って最初に浮かぶことは、世界的指揮者ロリン・マゼールさんの訃報です。手元のLPレコードにはジャケットに若い頃の写真が載っています。それがCDになると、徐々に風格が増していきます。LPからCD、そしてDVDと媒体の変化とともに、私たちを素晴らしい音楽の世界に案内してくれました。来日公演にも何度か足を運びました。ご冥福をお祈りします。
 LPレコードと言えば、きょうの朝日新聞に「レコード人気復活?」の見出し。レコード人気に復活のきざしが見え、9月にはパイオニアがアナログプレーヤーを発売するのだとか。今でもヨドバシカメラに行けば、アナログプレーヤーが並んでいますが、久々の新製品登場です。レコードの販売も復調の兆しがみえるとも。楽しい話題でした。
 デジタルとアナログ。この鬩ぎ合いについては、このブログで何度か触れたことがあります。電子手帳、スマホ、さまざまな装置を駆使してきました。でも最後は胸ポケットからペンを取り出して紙に書く。しぶとくスマホのスケジュール表やメモ帳に慣れなければと思いつつ、歳のせいかとっさの動きはペンになります。アナログの世界から離れることができないでいます。
 きょうは、若い頃、京都河原町の都レコードで買ったロリン・マゼール指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番のLPレコードを聴きながら、1日早いブログ更新でありました。三連休の中日の明日は、お仕事のためお出かけです。
  そうそう書き忘れていました。今週、東京に出張した際、仕事帰りに神保町に立ち寄りました。今回は、神田古書センター1階の高山本店で品定めでした。この古本屋さんには能楽関係の書がたくさん置いてあります。手にしたのは、多田富雄著「能の見える風景」(藤原書店)でした。あと店先にあった廉価本の中から、谷川徹三著「こころと形」(岩波書店)を見つけました。帰りの新幹線の中で、冷たいビールをいただきながら、ぱらぱら眺めていたら新大阪駅に着きました。

※写真説明:上段2点は先週訪ねた大原三千院の風景です。「往生極楽院」とその界隈にあった「わらべ地蔵」の写真です。心の落ち着ける空間でした。

 

 

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