今朝、愛犬ゴンタ爺さんと朝の散歩にでかけるとき、庭の片隅で孵化したばかりの蝉を見つけました。台風8号が通り過ぎるのを待っていたとばかりに、昨日は今夏初めてミーン、ミーンと夏蝉の声が聞こえました。7月も半ば、もうすぐ梅雨明けでしょうか。 そういえば、昨年、近所のお婆さんからいただいたホタルブクロ(蛍袋)の花が、ひっそりと咲いています。キキョウ科の多年草でツリガネソウの仲間らしいのですが、初夏に釣り鐘状の花を咲かせます。ホタルフクロの語源は、昔子どもたちが蛍を捕まえてこの花の中に入れて遊んだという説と、花の形が提灯に似ているからという説があるそうですが、なんとなく古き良き時代を思わせます。
ところで、先週金曜の夜は久しぶりに能楽を楽しみました。題して、大槻能楽堂自主公演能ナイトシアター「蝋燭能」。井沢元彦さんのお話「日本人の鬼の意識」に続いて蝋燭の点灯式が行われ、狂言「金藤左衛門」、能「安達原」が演じられました。
那智の山伏が諸国行脚中に陸奥の安達が原で貧女のあばら家に宿を借りる。女は、糸繰り車で糸を紡ぎながら自らの境涯を嘆く。女は、一夜の暖をと山に薪をとりにでかける。その際、自分の寝室を覗かないように念押しをする。山伏は、寝室を覗いて肝をつぶす。そこには、死体が累々と打ち重なり、見るもおぞましい有様。さては鬼の住処と気づき、慌てて逃げ出すと、そこに鬼の姿になった女が山から戻ってくる。女は寝室の秘密を暴露された怒りに燃え、襲いかかるが、山伏は呪文を唱えて祈り伏せ、鬼女は夜の闇の中へと消えていく。
手許の資料によれば、ざっとこんなシナリオですが、なんとおぞましいお話しであることか。でも、その昔、これに近いお話しはなんどか聞いた記憶があります。柳田國男、南方熊楠の世界とも近いものを感じます。これで能楽鑑賞は3回目になりますが、ふだんとは全く異なる時間と空間が、私を異次元の世界に誘いてくれました。姉の死、ホタルブクロ、能の世界、仏の世界。この1週間、ふだんとは違う世界を彷徨っている感があります。 昨日の土曜休日、自宅でゆっくりしようと思っていたら、家内が「どこかに連れてって」と。あまり遠出もできないので、祇園祭の迫った京都にでかけることにしました。それも、少し都会の喧騒から離れたいと思い、大原の里に足を延ばしました。
10時過ぎに自宅を出発して大原のバス停に到着したのが正午過ぎ。まずは昼食を兼ねて民宿「大原の里」をめざしました。ここは数年前もおじゃましたところですが、お目当ては温泉(単純温泉:弱アルカリ性低温泉)です。欲張りは言えませんが、温泉は温泉です。露天の五右衛門風呂を楽しんだあと、冷たいビールをいただきながら、少し遅めの昼食をいただきました。 清々しい気持ちになったところで、バス停まで戻り、今度は三千院に向かいました。こちらも徒歩10数分のところにあります。ちょうど、あじさい祭の時期でした。満開の時期を過ぎていたからでしょうか、あじさいの方は少し元気がないようにお見受けしましたが、大自然の中にある初夏の三千院も風情があります。往生極楽院で国宝の阿弥陀三尊像に手を合わせたあと、境内を散策して帰途につきました。バスで河原町まで戻ると、土用の日はもう少し先ですが、早々と鰻屋さんに寄って帰りました。
金・土と、ちょっぴり普段とは違う生活空間を過ごしましたが、日頃の硬直した頭脳を和らげてくれました。今週も、いろいろな会議が目白押し。そこに東京出張も加わります。きょうは雨模様ですし、音楽でも聴きながら、ひと休みしましょう。と言いながら、仕事をお持ち帰りでありました。