1月15日は小正月。お正月の松飾などを燃やす「どんど焼き」という行事もあります。新年を迎えて半月が過ぎましたが、都市部にも薄っすらと雪化粧となったのも束の間、緊急事態宣言の発出で出鼻を挫かれた感があります。首都圏も関西圏も感染拡大が収まる気配はなく、いやだなあと思う今日この頃です。
にもかかわらず、昨日、講座運営の打ち合わせで市街地にでかけると、街にそれほどの危機感がありません。宣言慣れ??。私が住んでいる街では昨日から公的施設が閉鎖されていますが、大阪府市関係の施設の多くは閉鎖されるでもなく、普段とそんなに違いません。宣言が掛け声倒れになっています。こりゃダメだろう。
宣言発出直前の日曜日、山本能楽堂の「たにまち能」に行ってきました。この日のお題は、素謡「神歌」、能「養老」、狂言「飛越」、能「雲林院」。たっぷり3時間半、能楽堂という異次元の世界を彷徨いました。
山本能楽堂は、国立能楽堂のように大きな施設ではありません。桟敷に配された椅子に座って間近に能舞台と対峙するという意味で、ある種の緊張感を肌で楽しむことができます。桟敷は座席指定ではありませんので、早い者勝ちになります。この日も早めに出かけて舞台正面、階(きざはし)の真ん前の席を確保することができ、演者の動作、表情、息遣い、目の動きを間近に楽しむことができました。装束のデザインと色彩の美しさも、そうです。
日本の伝統芸能を演ずる方々の多くは男性です。文楽でも歌舞伎でもお能でも、女性演者が登場することは滅多になく男社会です。ところが今回、藤原業平の霊を演じたのは山下あさのさんという女性能楽師でした。地歌座にも女性の方がお一人座っていらっしゃいました。
もうひとつ気づいたのは、今回、囃子方、地歌の中に、中堅若手の方々が混在していたことでした。能舞台に、老若男女入り乱れた新しい息吹を感じたものでした。
歳をとると、お正月は伝統芸能で幕開けかなあ。昨年のお正月は、なんばの松竹座で『壽初春大歌舞伎』を観劇しました。この日は帰り道、久しぶりに日本料理のお店に立ち寄りました。こういうご時世ですから、お客はまばらでしたが、大川沿いの席に座って夫婦水入らず静かに食事をして帰りました。
数年前からお能を見に行く機会が増えましたが、家内は最初の頃は始まると同時に眠っていました。笛と太鼓と鼓のリズム感が脳みそを和らげてくれるのでしょう。かの多田富雄先生もある本の中で同じような感覚をお話しになっていました。回を重ねる度に目覚めてきた家内です。先日、野村万作、野村萬斎、野村裕基などが演じる「祝祭大狂言会2021」(4月25日)に行こうというお誘いを受けることになりました(笑)。
というわけで、今年はお能に明け、お能に終わる、そんな年になる予感がしています。