ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

「そして、メディアは日本を戦争に導いた」

2013-11-26 00:55:23 | 読書
反骨の歴史作家、半藤一利さんと保坂正康さんの対談集、なるほどそうだったのかと読ませていただきました。

私は、昭和の初めに民主主義が機能不全に陥いり、国民が軍部を盲目的に支持し、結果、国としてあの不幸な戦争を選択してしまった遠因は、普通選挙にあったと考えています。
大正14年に25歳以上の男子すべてに選挙権が与えられましたが、日本にとって、これが時期尚早だった。
当時は、地方の地主層を支持基盤とする政友会と、都市部のブルジョアジーを基盤とする民政党の二大政党制になっていましたが、普通選挙で国民意識が未成熟なまま有権者が一気に4倍増となり、政党制の民主主義がうまく機能しなくなったということです。

国民が自ら考えることを停止し、独裁者に身をゆだねてしまった。そうさせたのは、満州事変をはじめ戦争を熱狂的に支持した新聞社であるというのがこの本の主張です。
朝日新聞は「新聞は新聞紙法により沈黙を余儀なくされた」と自社の社史に書いているそうですが、そんなことはなくて、新聞が売れるから、商売で援軍、擁軍になって、軍部と一緒になって走ったということ。
同様に、国際連盟脱退も新聞はこれを熱狂的に支持し、結果的に日本は国際社会から孤立、まともな外交が出来なくなった。
五・一五事件では、テロも義挙と擁護、当然テロは頻発し、政治家や財界の要人が次々と殺され、時代は二・二六のクーデターへ。
ここまでくると政治家もジャーナリズムも軍部の圧力に完全に沈黙するわけですが、どうも新聞社の場合は、言論の自由のために戦ったという形跡がなく、自ら進んで縊死したとしか思えません。

敗戦後、日本は、戦勝国に戦争犯罪人を決めてもらい、国民も新聞も「国に騙された被害者」という立場で、あの戦争を自らのこととして反省することはありませんでした。
今の状況は、あの昭和ヒトケタのころと似ている、と著者たちは警鐘を鳴らしています。
国民の政治不信を増長するような、商売重視のワイドショー的な報道ではなく、むしろ国民の意識を高め、政治家を叱咤激励して育てるような報道をしてほしい。

ところで、特定秘密保護法案、強行採決、しちゃいましたね。
健全なジャーナリズムの発現に期待します。





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