ソダンキュラから北極圏の境界線まで120Km、朝はゆっくりキャンプサイトを出発しました。厚い雲が空を覆っていましたが、雨が降るようには思えません。真っ直ぐの道を走っていると途中から急に道幅が5-6倍くらいに広くなり距離にすると数Kmはあったと思います。
初めは広さに驚き、次にどうして?と考え、”もしかして飛行機が不時着するのではないか” と話し合いました。(この夜フィンランドのニュースでよく似たような道路が滑走路に早代わりしていて、私たちの想像が正しかったことがわかりました。)
道路わきには村も家もほとんど見えませんが、花飾りのバス停と10個以上も連なる郵便受けで、道路の奥に家々や村があるのがわかります。
11時ごろから太陽が出て青空が広がり急に暑くなってきました。ノルウェーの北極線上とは何と言う違いでしょう。
ここフィンランドの北極圏の境界線上(Arctic Circle)には有名なサンタクロース村があります。
キャンピングカー用の無料の駐車場があり、数時間をこの村で過ごしました。
まず一回りしてお店や、サンタのオフィスや郵便局など見て、境界線をまたいで写真を写し、郵便局でサンタの絵葉書をたくさん買い込みました。
キャンパーに戻って二人で絵葉書にクリスマスのメッセージを書き込み切手を貼って又郵便局へ持ってゆきました。12月のクリスマス時期に発送し
てくれるのです。郵便局の入り口には世界中からサンタクロースに送ってきた手紙が貼ってありました。
サンタのオフィスに入ってみますと、サンタと一緒に写真を撮る所だと言うのでポールと迷っていると、”サンタはもうすぐお昼ねに入るから貴方たちで閉めます”と云われ、決心つかないままに写真を写すことになりました。
サンタクロースはポールに”何処から来ましたか”ときれいな英語で話し、私が”私は日本人です”と言いますと、”日本の何処から来ましたか?”としっかりした日本語で聞き返しました。”金沢から”の返答に ”私は去年の冬に金沢へ行ってきました”とサンタさんが日本語で云ったので、きっとクリスマスの夜は世界中に出没しなければならないから、何処でも”そこへ行った”と言う答えになるのだろうと思いました。サンタさんに何ヶ国語を話せるのか聞くのを忘れたのが残念です。
”76歳になってやっとサンタクロースが本当にいるのだと知った”とポールが云うので二人で大笑いしました。
村を去る前に高い見晴し塔に昇ってみました。サンタクロースの村は高い針葉樹の森に囲まれ、見渡す限り森が続いて、山ひとつ見えませんでした。
この夜は北極圏の境界線上から10Km南下したロバニエミ(Rovaniemi)のキャンプサイトで泊まりました。
昨夜激しい嵐で寒さに震え上がったのに、一夜明けたこの日、7月11日は素晴らしい青空でノールカップまで30Km、キャンプ場から急な坂道を登ってゆきました。あたりは一本の木もない荒野で、山の途中からキャンプサイトやホテルが見え、この島を取り囲んでいるフィヨルドが青く輝いています。
途中で道を間違えて、たどり着いたところは人口約175人のスカルスウ”ォーグの村でした。こんなところにも人が住んでいるのかと思うくらいの小さな入り江の周りに家が立ち並び、漁船が数隻停泊していました。
もちろん店などは見えませんでしたが、小さな郵便局のマークが目につきました。ここの島では11月18日から1月24日までは太陽が昇らないのです。そんな太陽のない2ヶ月間の厳しい冬など想像も出来ませんが、夏は5月11日から7月31日まで真夜中の太陽が見られるわけです。
30Kmは荒野の中の上下の激しい道で、サイクリングであえいでいる人たちを気の毒に思いつつ追い越し、とうとうノールカップに着きました。
入場料が結構高いのですが、48時間駐車可でたくさんのキャンパーが真夜中の太陽を見るために駐車しています。
ノールカップホールには世界最北の郵便局、小さな教会、レストラン、バーやシアターがあります。シアターではこの地域を空中撮影した映画を30分おきに上映していて、たとえどんな天気でも、真夜中の太陽が見られるようになっています。
高さ300メータの崖の上の岬には地球をモチーフしたモニュメントがあり、記念写真を写す人たちでいっぱいでした。
又世界の子供たちがデザインしたと言うモニュメントが有って、そのうちのひとつは日本の女の子であゆみと書かれています。
我が家を出て4週間、2215マイル(3542Km)でヨーロッパの最北端へたどり着いたのです。キャンパーからイギリスの友達や娘と息子に ”ノールカップに着いた。Banzai” とテキストメッセージを送りました。友達からすぐ”Omedeto”の返信がありとっても嬉しく思いました。
この岬は海が180度見渡せ、山や丘など高いものが一切ないので、このような晴天の日は太陽を24時間見ることが出来ます。
でも今までに3回も真夜中の太陽を見てきたので、もう充分と午後の2時にノールカップを後にしました。
又お金を払って海底トンネルを通り、島から100Km南下しました。
途中の道ではいたるところトナカイが道路上にさまよい出て、その度に交通がストップしました。でもこんなにたくさんの群れが出てきたのは、後にも先にもここだけでした。