機能性胃腸症。
…なんか、先々週辺りの“解離性障害”同様、エライ人に何かあるたびにやたら聞いたことない病名に詳しくなるな、って気がしないでもないですが、それにしても、“下血”って。
昭和天皇の最後のほうの1年ぐらいでよく報じられ耳目にした症状名です。マジヤバいじゃないですか。体重も5キロ減、って。
男性と女性じゃベースが違うでしょうが、月河の体格なら、5キロ、増えたらブサくなるだけだけど、減るほうに5キロじゃ、ほとんどフラフラですよ。
「そんなに具合悪かったんなら、シドニーで声明したり組閣とかしてないで、早く言えよ!」って話ですよ、安倍さん。
早くもと言うか、遅いよと言うか、後継総裁候補の固有名詞もいくつか(むしろ多過ぎるくらい)取沙汰されていますが、とにかく、カラダだけは頑健な人を頼みますよ。
…そう言ったら、また森喜朗さんみたいなのが来るのか。それはまたそれでイヤだな。
しかし、考えてみれば、昨年9月に総理総裁を安倍さんに譲って任期満了した小泉純ちゃんなんかは、いつ「あぁ…」って倒れてもおかしくないようなヴィジュアルで、5年5ヶ月よくもったな。
たぶん“土日は会談も取材もいっさい入れずパジャマでプライベート、音楽三昧”というON/OFFの線引ききっちりが長持ちの要因でしょうね。人間、張り詰めっ放しじゃもたないですもんね。
あと、地元選挙区絡みのドブ板仕事を姉上や弟さんが引き受けてくれて、ご本人は独身、とかくツッコまれどころになりがちな嫁はナシ、ってのも効いた。
安倍さんは本当に、時機的な政情の波にも、人的運にも恵まれなかった。この上“健康運”の弱さまでお父上譲りにならないよう願うのみです。
『金色の翼』第54話。
8月上旬、東海テレビお膝元の名古屋で開催されたトークショーで、槙役の高杉瑞穂さんが「このドラマは槙と修子のラブストーリーです」と強調されていたという(ネット上の伝聞ですが)意味が、いまになって重みを持ってきます。
今日の放送も、今日だけ見たら、修子(国分佐智子さん)と槙の間に流れる熱く濃い恋愛感情は、8年前の殺人事件とその容疑者の潜伏疑惑、及び迫田(片岡弘貴さん)突き落とし事件の謎が綾なすフロントページの“通奏低音”の域まで退がっています。
しかし、ここで考えてみるわけです。この物語のしつらえで、もし、1話の修子来訪がなかったらどうなったか。
たぶん理生(肘井美佳さん)は、あの時点でその気満々だった奥寺(黒田アーサーさん)と、セツ(剣幸さん)の敷いたレール通り、槙に未練残しつつも結婚。玻留(倉貫匡弘さん)と出会うこともなく幼児的なまま行かず後家となった玖未(上野なつひさん)と、やまぬ奥寺の女遊びに手を焼いていたことでしょう。
でも理生の犠牲により、当面海と空のホテルの経営危機は奥寺の財力で回避、静江(沖直未さん)はセツへの逆恨みで何か仕掛けて揺さぶったでしょうが、奥寺の三代目経営がずっこける前に、意外とあっさり詐欺容疑で先にお縄の可能性もあった。
いま、盛んにドラマに匂わされているセツの、ホテルにまつわる“秘密”も、セツがお墓に入るまで誰からも怪しまれることもない。
一方、槙はもともと理生にさほど執着があったわけではないので、経営危機を脱したセツの援助のもとフィリピンでパイロット免許を取得、ときどきヤバい運び屋のアルバイトでもバレない程度にこなしながら、奥寺夫人となった理生と不倫の火遊びを、それなりに楽しんであきらめの人生を送っていたかも。
槙のそばにいれば娘殺害の手がかりが…と信じた杉浦夫妻(佐々木勝彦さん増子倭文江さん)も、時効が成立するまで踏ん張るか、途中であきらめて東京に引き揚げるかどちらか。
石野料理長(田中聡元さん)だけは、心を寄せる理生がセツ引退後ホテルを継いでくれることを期待して、とどまってくれたかもしれませんが。
こう考えてくると、やはり修子の来島が、すべての人々の「こんなこといいな、できたらいいな」に“スイッチを入れた”わけです。
「私にはもう逃げるところはない、逃げても行く所がない」と言う修子、財力だけはあり余るほどあるはずの修子が、何故、ドン詰まりにこの島を選んで訪れたのか?
そこにこそ、このドラマ最大の謎があるのかもしれません。
ここに来て、次回予告の音声のどアタマに「幽霊退治?」という、堂々たるミスリード台詞を持ってくる、スタッフの度胸とセンスには感服。全国から「んなワケねぇだろ!」というツッコミの声が聞こえた気がしました。
撞球室の外での修子と槙の会話を盗み聞くためにステレオのヴォリュームをこっそり下げ、修子が立ち去るとギリギリのタイミングで車椅子の位置ごと元に戻して知らん顔をする迫田、不審そうに探り見る槙…の場面もよかった。
迫田が動ける、認識力もあることに、槙はほぼ確信があって、それを絹子刑事(高嶺ふぶきさん)ら周りに証拠立て暴くことには関心がない。大事なのは、意識あって動ける迫田が、“自分を突き落とした犯人”という切り札を持って、次に誰と組もうとするかということです。
さらに、槙も修子もセツもまだ知らない、迫田の“修子の体に触れたときの違和感”というワイルドカードも厳然と存在する。
この稠密な謎構築、ジェンガのように一本引き抜けば一気に瓦解しそうでしない緊張感が、いったいどこまで続くのでしょう。
さらにその上位(むしろ“下部構造”と言うべきか)には、“同じ匂いのする同士”として惹かれ合い、補完し合わんとする修子と槙の、磁力のような情念が脈々と流れている。
謎が情念を動かすか、情念が謎を突き崩すか。
もうね、コレ、一日に3話ぐらい放送してくれないと焦燥で焦げるね。