異世界
少女は雲の上に載って空を飛んでいた。
その身体の中には魔界のものが巣くっている筈だ。
僕等は少女の乗った雲を軽トラで追いかけていた。
軽トラの荷台には売れ残ったイチゴのパックが何個か乗っていた。
少女の乗った雲はどんどんスピードを上げていき、
やがて見えなくなってしまった。
それでも雲の消えていった方に軽トラを飛ばしていた。
やがて森の中に入っていき、行き止まりになってしまった。
「ここから先は行けないな・・・」僕がそう云うと、
軽トラを運転していた相棒が運転席から下りて、
行き止まりになった森の一部に手をかざす。
すると空間が水面の波紋のようにゆがんでいき、
相棒はそのまま先に歩いて行った。
僕も相棒がやったように空間に手をかざしてみる。
しかし先に行くことは出来なかった。
よく見ると、空間に手形が浮かんでいる。
この手形に沿って手をかざしてみると、そ
の先の空間に行くこことが出来た。
そこは異世界だった。
森の先には田んぼのあぜ道のようになっていて、
巨大な昆虫がうごめいていた。
その昆虫のせいで、その先に行くことが出来ない。
「何か武器が必要だな・・・」僕が云うと、
相方は「ここでは武器は通用しない。“力”が必要なんだ」と云った。
「“力”・・・?」
僕はそれが何かと尋ねたが、相方は首を横に振った。
相方は情報収集のために女子大生との合コンに参加しようと云った。
仕方が無いので、相方について行く。
待ち合わせの場所には数人の男女がいた。
自称“女子大生”はどう見ても70歳台にしか見えなかったが、
今回はあくまでも情報収集が目的なので、そこは目をつぶろう。
合コンの参加者は大きめのチェーン店の居酒屋に入り、コンパを開始した。
自称“女子大生”ははしゃいでいるだけだったが、
若い男が僕等に話しかけてきた。
彼は一枚の紙を僕等に見せた。
それは何かの権利書のようで、
そこには近所のドラッグストアが写真入りで載っており、
名義人の欄が二重線で訂正されていて、
代表者の名前で“岡副元気”に書き換えられいている。
お笑い芸人の岡副元気が何故ドラッグストアの代表になっているのだろうか。
店のテレビでは、ちょうど岡副元気が自虐ネタを披露していた。
※これは林檎乃麗が見た夢を文章化したもので、
実在の少女、軽トラとその運転手、合コン、自称女子大生、
お笑いピン芸人とは一切関係ありません。
2024/07/17
※書き下ろし