林檎乃「とほほ・・・。」ブログ

林檎乃麗の「とほほ・・・。」な日常を綴っています。 

特別寄稿「初夢2006」

2012-08-14 | 日記
僕はその列車でずっと旅をしていた。
列車は箱庭の中を何時までも走り続けていた。
座席の脇に緑の公衆電話が付いている。
不思議に思っていると一人の女性が近づいてきていった。
「これは200系初期車なのよ」
東北新幹線200系初期車ならそういう構造になっていたかもしれない。
僕らを乗せた列車は砂漠の中をどんどん走り続けていた。
そして終着駅に着いた。
僕は列車を降りて改札口に向かって歩いた。
反対側のホームには見たこともない列車が入線している。
写真を撮れないのがすごく悔しかったが、そのまま改札に向かった。
改札は思ったよりも混雑していてなかなか抜け出せない。
僕は改札口を諦めて地下へ入っていった。
地下はお洒落な喫茶店のようになっていった。
あたりは明るく壁には綺麗なガラス製品が飾られている。
腹が減っていたのでここで食事をとるのも悪くないなと思ったが、
店員に聞くとここは化粧品の販売店で喫茶店ではないという。
残念に思いながらここを出て再び階段を上った。
改札はだいぶすいていたが、まだ人だかりはしていた。
僕が改札を出るとひとりの男が赤い林檎を持って立っていた。
男は云った。「この林檎を持ち主の女性に返さなければなりません」
「持ち主の女性・・・」僕は考えた。
列車の中でそれが200系初期車と教えてくれた女性ではないのか。
僕らは彼女を追ってバスに乗った。
バスは箱庭の中の砂漠を進んでいった。
そして何もない砂漠の真ん中で僕らは降りた。
そしてその男が僕に赤い林檎を手渡した。
「これは勇者の林檎です。これを受け取りなさい」
「勇者の林檎・・・」
僕はその林檎を受け取って手の中で見た。
その林檎はまるで桃のようにピンクに柔らかい光沢を放っていた。
「その林檎で世界を救いなさい
「世界を・・・」この箱庭の世界をこの林檎が救えるのだろうか・・・。
「その林檎には林檎の霊が閉じこめられている」
「りんごのれい・・・」
「そう、それでこの世界をおまえが救うのだ!」
そういってその男は再びバスに乗って去っていった。
ピンクの林檎はさらに光を放っていった。
しかし僕は考えた。
この林檎でどうやって世界を救えばいいのだろう。
僕は砂漠の真ん中にいた。
すでにバス停さえ砂に埋もれていて、再びバスの来る気配はない。
駅はどちらの方向なのだろう。
僕は駅がどこにあるのか分からず、砂漠の真ん中で途方に暮れていた。
ピンクの林檎とともに・・・。

※これは林檎乃麗が見た初夢を文章化したもので、
実在の車両、化粧品販売店、赤い林檎、砂漠とは一切関係ありません。

2006/01/02 12:48

初出:ASAHIネット電子フォーラム、serori・networkの中の会議室「短文文筆家集合所」
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