ユピテルとセメレー
媚びることなく自分の世界を追求し守り抜いた画家、ギュスターヴ・モローは、私の憧れ、羨ましい限りである。
パリにあるモロー美術館は、かつて彼が住み制作した場所そのもので、ここを訪れるたびに、自分がモローのようにこの場所で制作に耽る様子を想像したものだ。
生活のための諸々の厄介ごとから免れて、質素でまったく構わないから、美の世界に身を投じていたい。
もはやもう過去の遺物となったような絵画ではあるが、隠者なればこそこれに奉仕すべきであろう。
しかし、現実は容赦なく、スレイブへの頚木をつけてくる。
本物の隠者への道のりは、かなり険しそうだ。