ジェンダー研究(女性学)の第一人者であられる東京大学名誉教授・上野千鶴子さんの祝辞が話題を呼んでいます。
「ご入学おめでとうございます。あなた達は激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。
その選抜試験が公正なものであることをあなた達は疑っておられないと思います。
もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。
が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。」
から始まる祝辞です。
一部を抜粋させて頂きますね。
上野千鶴子先生は、各種データを活用されて、まだまだ残る男女格差を語られます。
「4年制大学進学率そのものに性別によるギャップがあります。
2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。
この差は成績の差ではありません。
「息子は大学まで、娘は短大まで」で良いと考える親の性差別の結果です。」
抜粋だけでは、意味不明になるかもしれませんが、、、。
「そうやって東大に頑張って進学した男女学生を待っているのは、どんな環境でしょうか。
他大学との合コン(合同コンパ)で東大の男子学生はもてます。
東大の女子学生からはこんな話を聞きました。
「キミ、どこの大学?」と訊かれたら、「東京、の、大学...」と答えるのだそうです。
なぜかといえば「東大」といえば、ひかれるから、だそうです。
なぜ男子学生は東大生であることに誇りが持てるのに、女子学生は答えに躊躇するのでしょうか。
なぜなら、男性の価値と成績の良さは一致しているのに、女性の価値と成績の良さとの間には、ねじれがあるからです。
女子は子供の時から「かわいい」ことを期待されます。
ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?
愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。
だから女子は、自分が成績が良い事や、東大生である事を隠そうとするのです。
東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱した事件がありました。
加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。
この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、
昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。
「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。
この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかが分かります。
東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。
わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました。それが半世紀後の今日も続いているとは驚きです。」
医学部だけでなく、どこの大学でも男女格差が根強く残っているのだと感じました。
「これまであなた達が過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。
ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。
社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。」
「あなた達は頑張れば報われる、と思ってここまで来たはずです。
ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、頑張ってもそれが公正に報われない社会があなた達を待っています。
そして頑張ったら報われるとあなた方が思えることそのものが、
あなた方の努力の成果ではなく、環境のお陰だったこと忘れないようにして下さい。
あなた達が今日「頑張ったら報われる」と思えるのは、
これまであなた達の周囲の環境が、あなた達を励まし、背を押し、手を持って引き上げ、
やり遂げた事を評価して褒めてくれたからこそです。」
ここからが、また素晴らしいお言葉です。
「世の中には、頑張っても報われない人、頑張ろうにも頑張れない人、頑張り過ぎて心と体を壊した人...達がいます。
頑張る前から、「所詮おまえなんか」「どうせ私なんて」と頑張る意欲をくじかれる人達もいます。
あなた達の頑張りを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないで下さい。
恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶める為にではなく、そういう人々を助ける為に使って下さい。
そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きて下さい。」
「あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。
これまであなた方は正解のある知を求めてきました。
これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。」
「あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、
たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。
大学で学ぶ価値とは、既にある知を身につけることではなく、
これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。
知を生み出す知を、メタ知識といいます。
そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。」
私が感銘を受けたところは、後半部分となります。
大学だけの話ではなく、どのような分野に進んでも、
身に付けるべき事は、予測不可能な未知の世界でも生きていける知であるという事。
少しでも世の中の人々の為に頑張る事が出来る能力を身につける、、、それが大切なのだと感じました。
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