巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
うっかりしていた、24日は終業式だ。それにクリスマスイブでもある。
気が付いたのは頼まれたあくる日なんだけど「こっちこそ間違えて申し訳ない、23日まででかまわないよ」と科長さんの方から言ってくれた。
「加藤君(10円男)が気が付いてね、言ってくれたみたいよ」
安藤さんが種明かししてくれる。
「いや、仕事の方も20日を過ぎるとバッタリ減るんだ。お歳暮もお仕舞だし、まあ、バイトの中でもベテランクラスは残して稼がせてやろうと声をかけてくれるんだ」
お礼を言いに行くと、もう一つ奥深い種明かしをしてくれる。
「ああ、なるほどぉ」
でも、電話の一本くらいしてくれても……と思わないでもない。わたしのスマホは、50年の歳月を超えて令和でも繋がるようになってるんだから。
「電話はしたらしいよ、二回とも留守だったって」
あ、そうか、1971年は、まだ留守電サービスは無いんだ。スマホは基本マナーモードにしてるしね。
そして、無事に終業式。
もらった通知表は赤点もなし。5もないけどね、平均を取ると3.6といったところ。二期校を目指す面々は相応の成績のようで、みんな穏やかな顔をしている。
「いい、二期校とか私学の高めを狙ってる人は、次の三学期が最後のチャンスだからね。その気があるんなら、最後のがんばり見せてね! 三年になったら、その時の成績でしか受験先決められないからね!」
花園先生が檄を飛ばす。
全体の終業式じゃ「二年生は、いま持てる力に見合う進路先を探そう。三年になって高望みをすると高い確率で浪人することになる」と校長先生は言っていた。花園先生の方が微妙に夢を持たせてくれている。
「大正生まれと戦後生まれの違いでしょうねえ」
ロコは冷静に分析する。
「そうだな、日本は自分の力を見誤って戦争に突入して大敗を喫したんだからなぁ」
「異議なーし!」
委員長の高峰君と10円男は日本の国運まで話を広げながらパイプ椅子を並べる。女子とボランティアは前列にゴザを敷く。花壇の前にはビールケースを並べ、その上にコンパネを敷いて特設ステージ。そして、その背後には去年より一回り大きくなった焚火というか聖火台というかのエフェクト。さらに、その上の渡り廊下から看板が下げられ、去年の三倍マシマシの規模とデコレーション!
伊勢半のバイトでぜんぜんカメてなかったけど、なんだか文化祭と同じくらいの力の入れようで、令和少女はビックリだ。
去年も盛り上がったけど、中庭の真ん中に池があることもあって、参加者の半分以上は遠巻きにしていたって感じ。
それを少しでも集中させようとステージとゴザの桟敷席、パイプ椅子の椅子席と、その後ろに立見席。ぜんぶ埋まったら500人くらいは入れそう。
ガーガーピーー ピーガーー
マイクやアンプのテストを始めると早くも桟敷席に座布団持参の一年生たちが座り始める。顔を見ると、文化祭のウェディングパラダイスやら、テスト中の顔見世とかで来ていた子たちが中心になってる。
中庭の両脇は本館と南館、この様子を見た生徒たちも次々に集まって来て、準備が整った時点で桟敷席の全部と椅子席の半分が埋まってしまった!
真っ赤なお鼻のぉ トナカイさんは~ いつもみんなの~ 笑いもの~(^^♪
だれでも知っている『赤鼻のトナカイ』から『クリスマスイブの集い1971!』が始まった!
今年もいよいよ千秋楽!
ううん、まだまだありそうな気がする。
とりあえず昭和46年のメリークリスマス!!
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- 妖・魔物 アキラ
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
- 安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人