大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・231『閃いたのはいいんだけど』

2021-09-05 13:22:17 | 小説

魔法少女マヂカ・231

『閃いたのはいいんだけど語り手:マヂカ   

 

 

 ちょっと難しい。

 

 妖や魔法少女相手ならどんなことでもできる。

 魔法と力技で封じ込めるとかやっつけるとかすればいいことだ。

 つい最近も、横浜で魔物侵略軍を壊滅させたり、横須賀で待ち伏せしていたロシアの艦娘どもをやっつけた。

 

 しかし、今度はリアル・現実の軍艦だ。

 それもやっつけるわけではない。

 イギリスの巡洋艦が長門を発見して追って来るのを阻止するという難しいものだ。

 

「やっぱり、無理でしょうか?」

 

 腕組みしたわたしが不安を与えたのだろう、赤城さんが目を伏せてしまう。

 ノンコと霧子が「どうにかならないの?」という風にわたしを見る。

「方法が無いわけではない」

「「「どんな?」」」

 三人の声が揃う。

 プレッシャーだ。

「長門の幻を作って、カタログデータ通りの22ノットで走らせて、巡洋艦に追わせればいい」

「「それよ!」」

 霧子とノンコが無邪気に喜ぶが、さすがに赤城さんは心配顔だ。

「幻の長門って、大変じゃないんですか?」

「「そうなの?」」

「ちょっと大きすぎる。わたし一人じゃ規模的にも時間的にももたない」

「あたし、参加しよか!? あたしも魔法少女の端くれやさかい!」

「ノンコには化学教えてないからなあ、わたしが術を掛けても、他の人間に化けるのがやっとだ。戦艦みたいなデカブツは無理だ」

「……そうなんや」

「それに、相手はプロの海軍軍人だ。正確に化けなければ見破られてしまう。正確に化けるには、よほど本物の長門の傍に居なければできない」

「それって……」

 頭の回転のいい霧子は見当がついたようだ。

「瞬間だけど、本物と偽物の長門が並んで走ることになる。化けた瞬間に本物を逃がさなきゃならない。いくら26.6ノットといっても東京駅ほどのデカブツだぞ、無理だ。もしできたとしても……」

 

 自分が天才魔法少女であることを呪った(;'∀')。

 

 無理なことを説明しようとして、対策を思いついてしまった。

「どないしたん、マヂカぁ?」

 長い付き合いだ、ノンコは、わたしの閃きを読み取って、ヨダレが出そうな笑顔になる。

「いや、なに……一人がイギリスの巡洋艦に乗り込んで、偽物が見えた瞬間に『長門発見!』と叫んで、同時に、もう一人が長門に乗り込んでいて、同じ瞬間に長門の姿を隠せばできないことではない」

「すてき!」

「そうか!」

「え? え?」

 霧子と赤城さんがたちまち理解し、呑み込みの悪いノンコの頭にいくつも?マークが浮かぶ。

「こういうことですよ! ちょっと、マヂカさん立ってください!」

「あ、ああ」

「マヂカさんが本物の長門で、わたしが偽物だとします」

 ドロン

 言うがはやいか、赤城さんはわたしに化けた。

 エイ!

「「あ、真っ暗!」」

 魔法で二人の視力を奪うと、わたしの姿を消してしまった。

 パチン

 赤城さんの指が鳴る

 と……二人の視力が戻って、目の前には、わたしに化けた赤城さんだけが残る。

「あ?」

「えと?」

「わたしは偽者です。本物のマヂカさんは……」

 ゴソゴソ

「ハハハ、ここだ……」

 タイミングを合わせて机の下に隠れたわたしが姿を現わす。わたしも付き合いがいい(^_^;)

「「なるほどおお!」」

 二人も分かったようだ。

 そう、本物と偽物を入れ替えて、イギリスの巡洋艦の目をくらませてから本物は26.6ノットで東京湾を目指すという寸法だ。

 

 しかし、待ってくれ!

 これをデカブツの長門でどうやるんだ?

 それに、タイミングよく本物を隠して、偽物に注目させる!

 いったい、どうやって!?

 

 ああ、墓穴を掘ってしまった(^_^;)!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

 

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ライトノベルベスト〔零式戦闘機操縦教程・1〕

2021-09-05 06:25:40 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

〔零式戦闘機操縦教程・1〕  




「純が女の子だったらね……」

 年末になると、たいがいお袋から、この愚痴が漏れる。

 うちはオレ純と純二の二人兄弟。鹿児島の旧家出のお袋は、年末年始の準備を、よその家の三倍くらいの丁寧さでやる。

 買い出しや、ゴミ運びなどは手伝うが、料理や一家の新年用の衣類の買い出し、服の入れ替え、念入りな掃除などには役に立たない……そうだ。

 子供の頃は、半ば遊びのような調子で手伝っていたが、どうも兄弟そろってセンスが無いようで、手伝うと、あとでお袋がやり直していることが多く、中学からこっち、ゴミ運び以外は犬でもできそうな買い出ししかしない。

 けしてサボっているわけではない。

 今日も朝から年内最後の大ゴミの始末をすると、オレ自身が粗大ごみのような目で見られるので、定期で行ける神田の街に出てみた。

 純二は、オレより器用で要領がいいので、朝からバンドの練習と言って家を出ている。学校の軽音が高じて、デュオを組み。都のヘブンリーアーティストの資格なんかとって、あちこちで演奏している。デュオの相手は紗耶香という、ちょっと可愛いことだけが取り柄の女の子。

「あの子は、嫁に来ても役にたたないわね」

 一度純二が連れてきたとき、わずか五分で結論を出してしまった。狙いはオレの嫁さんなのかもしれないが、オレは昭和も初期じゃないかと思えるようなお袋や親父と同居するつもりは無い。

 進路も特別推薦で決まった高校三年生。大学に入るまでは人生の執行猶予みたいな四か月だ。

 オレは、高校生の割には古本屋が好きだ。かといってあまり買うことはない。たまに昭和初期から江戸時代の古地図(江戸時代はさすがにたレプリカ)なんかが出てると買ってしまう。

 地図には二つの古さがある。

 一つは地図そのものの古さ。黄ばんでいてもシミや書き込みがあっても気にしない。むしろ、その方がおもしろい。誰かが、その地図を使い、書き込んでできたシミである。時に濃厚な汗染みや、血の跡が付いているものがある。すごく使った人の歴史と地図そのものの遍歴を感じてしまう。

 もう一つの古さは、書いてある地図の情報そのもの。日比谷公園が練兵場であったことや、築地に劇場があったことなどを発見しては喜んでいる。

 家や学校の周囲の新旧の地図はそろえてある。お袋の故郷の鹿屋の地図もある。戦後までは軍の飛行場があったので、それ以前の地図は「軍用地」とだけ書かれ、輪郭以外はなにも分からない。

 それを、今日は偶然に見つけてしまった。

 軍用地図で、基地内のこともしっかり載っている。さぞや高いだろうと値札を見ると、なんと3240円だった。

「それらしく見えてるけどレプリカだから」

 店のオジサンは、そう言った。でも時代の出し方、血のシミまで本物そっくり。オレはさっそく買った。

「おまけが付いてるよ」

 オジサンは、机の下からそれを出した。

 零式戦闘機操縦教程と書かれたDVDが付いていた。なるほど、本来はDVDが本体で、地図は付録なんだ。

「うちとしては、地図の方が本体だからね」

 なるほどと、納得した。

 家に帰って、中味を見るとプレステ3でも再生可と書いてあった。

 優れものだった。零戦の操縦の基礎から、空中戦の基本まで、コントローラーを使ってできた。伝説の空中戦の旋回中の捻りこみの仕方まで書いてある。

 明日は日曜日。

 オレは、午前二時まで頑張って、捻りこみまでできるようになり、ポルコロッソになったような気がした。

 

 

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