大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:215『イザナミと黄泉戸喫』

2023-11-14 16:55:45 | 時かける少女

RE・

215『イザナミと黄泉戸喫』テル 

 

 

 燃え盛る死者への手紙、その炎の照り返しを受けながら考えた。

 この先の展開はどうなっていただろ?

 

 オノコロジマで火の神を生んで、それにイザナミさんは焼き殺されてしまった。

 もし、火の神を生むことが分かっていたら、ありったけの鍋やら甕やらバケツやらに水を溜めておいて、生まれると同時にぶっかける! いや、ぬるま湯のプールを作って、そこで出産してもらう! 

 日本の神話なんて学校で習わないから、ぜんぜん分からなかった。アニメやラノベで知っている断片だけ。

 その断片も、黄泉の国への旅が進むにつれて、どんどん忘れてきている。

 たしか……イザナギノミコトは一人で黄泉の国へ行くんだ。

 そこで大変な苦労をするんだ……命からがら黄泉の国を脱出するイメージが浮かぶ。

 そうだ、無事に送り届けるだけじゃダメなんだ、連れ戻すところまで見届けなくちゃダメなんだ。

 

 イザナギさんを一人で行かせちゃダメだ。みんなで来たんだ、みんなでイザナギさんを助けなきゃ!

 そうだ、この世界にやって来て、このメンバーが一緒になったことには意味があるんだ!

 みんなで助け合うんだ!

 

――みんな、聞いてほしい!――

 

 檄を飛ばそうと息を吸い込むと咳が出た。

 ゴホゴホゴホ(≧д≦;)

 え、自分の咳じゃない?

 

 振り返ると、黄泉の入り口でイザナミさんが咳き込んでいる!、当の救助対象である女神イザナミその人が咳をしながら立っているではないか!?

 え、ミッションコンプリート?

イザナミ:「ちょっと、入り口で焚火なんかしないでよ、煙がみんな中に入って来るんだから、ゲホゲホ……」

イザナギ:「イ、イザナミぃ!!」

 ええ!? イザナミさん!? なんで!? え? ええ( ゚Д゚)!?

イザナミ:「え、え……あなたたちは……あ……あ……イザナギさん( ゚Д゚)!?」

イザナギ:「よかったぁ! 迎えに来たんだよ! まだまだ国生み神生みの役目が残ってるし、みんなも心配して付いて来てくれたんだよ。もっと大変かと思ったけど、よかった、君の方から出てきてくれて! こんな簡単に会えるなんて思わなかったよ!」

 

 パチパチパチパチパチパチ(^▽^)!

 

 みんな笑顔で拍手して、エンドロール……にはならなかった。

 

イザナミ:「ああ……え……えと……申し訳ないんだけど……無理!!」

イザナギ:「え?」

イザナミ:「無理なの!」

みんな:「「「「「「なんで?」」」」」」

イザナミ:「だって、もう黄泉戸喫(よもつへぐい)してしまったし!」

イザナギ:「ああ……黄泉戸喫……(;゚Д゚)」

 

桃太郎二号:「え、屁を食ったのか?」

 

 桃太郎二号の天然ボケを笑う者はいなかった。

 二人の神さまの表情から、非常にまずい事態になっていることが読み取れれるからだ。

 

イザナギ:「思い出しました……黄泉の国の食べ物を食べてしまった死者は、現世(うつしよ)には戻れないんです」

イザナミ:「そうなの、せっかくここまで来てくれたけど、幽世(かくりよ)の定めを破るわけにはいかないわ」

ヒルデ:「しかし、現にこうして現れているではないか!」

イザナミ:「あ、あなたは?」

ヒルデ:「北欧神オーディンの娘にしてブァルキリーの姫騎士、漆黒のブリュンヒルデである」

イザナミ:「あ、ああ、出産に立ち会ってくださった!」

ヒルデ:「ああ、あの国生みには感動した。このわたしが見ても、あの国生み神生みは道半ばであろう。こうして現世の境まで出てこられたのだ、イザナギ殿と共に戻って、偉業を成し遂げるべきだろう」

イザナミ:「それは……」

ヒルデ:「わたしも似た宿命を負っている。わたしは、その無知から数多のヴァルキリーの戦士をラグナロクの地獄に落してしまった。わたしは、そのヴァルキリーの戦士たちを救うために異世界を彷徨っている。もし、ここに、そのヴァルキリーの戦士たちがいたら、わたしは、地獄の門を破ってでも助けるぞ」

タングニョースト:「姫殿下……」

イザナミ:「貴く力強いお言葉ですね、感服いたします。しかし、こう言ってはなんですが、この国にはこの国の理があります。神の身であるわたしが、その理を破るわけにはいきません」

ヒルデ:「こうして、イザナギ殿の前に現れたというのにか!?」

イザナミ:「はい、決まりは決まりです」

ヒルデ:「そんな、それは、まるで車が一台も通らない交差点の赤信号を馬鹿正直に守っているようなものではないか!」

イザナミ:「それが、この日本なのですよ、異国の姫騎士殿」

ヒルデ:「グヌ」

イザナギ:「ありがとうヒルデさん。妻の言うことももっともなのですよ。こういう気質で、この国は動いていくのでしょう。それは大事にしたいと思います」

イザナミ:「我が君……」

イザナギ:「しかし、我が妻よ。ここにこうして、様々な縁からわたしの旅に付き合ってくれた人たちがいることも事実です。あ、みなさんを紹介してもいいですか?」

イザナミ:「はい、わたしもみなさんのお気持ちはありがたいと思っています。せめて、みなさんのお顔とお名前を胸に刻んでお別れしたいと思います」

イザナギ:「ありがとう、では、もう一度ヒルデさんから」

ヒルデ:「では、正式に名乗りを……主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士、我が名はブリュンヒルデである」

タングニョースト:「オーディンの副将にしてムヘン総督たるトール元帥の副官タングニョ-ストであります」

イザナギ:「その背中の背嚢は?」

タングニョースト:「よくお目を停めてくださいました。わけあって、肉体を損なっておりますが、戦友の同じくトール元帥の副官タングリスであります」

与一:「下野は那須の兵(つわもの)、那須資隆の十一男、那須与一宗隆」

テル:「小早川……いえ、テルと申します」

ケイト:「えと、ケイトです」

桃太郎二号:「桃太郎二号」

ヨネコ:「ヨネコです。米子の案内係りやってます」

雪舟ねずみ:「雪舟ねずみでございます、総社市でタクシーの運転手をやっております」

イザナギ:「みんな大切なわたしの仲間です。ここに無事にたどり着けたのは、ここにいるみんなのお蔭です」

イザナミ:「そうなんですねぇ…………みなさん、ほんとうにありがとう、そして、ごめんなさい!」

 

 深々と頭を下げるイザナミさん…………その下げた頭から涙がポタポタと流れ落ち、イザナミさんは、なかなか顔を上げなかった。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・78『アメリカA郡T町・1』

2023-11-14 08:52:42 | 小説7

RE・友子パラドクス

78『アメリカA郡T町・1』 

 

 


 滝川のネットワークと推理でターゲットが絞り込めた。

 

 かなりの人数がマインドコントロールされ、教祖的な存在、もしくは身内に重篤な病気を抱えた者。その中でも、表だった活動が認められないものを絞り込んだ。

 世界的規模の捜索だったが、思いのほか早い。引退したとはいえ、かなりのネットワークがあるようだ。

 活動が活発なところは、ゲリラ組織、名前の通ったカルト集団ばかりであった。

 滝川は考えた。おそらく日常に溶け込んで、教祖の姿さえはっきりしない。そんなところが本拠地であると。

 アメリカの中西部K州の丘の町、A郡T町が、そうであった。

 靖国神社を放火しようとした犯人は、数か月前にアメリカへの渡航歴があり、その時アメリカでマインドコントロールされ、指令が与えられたようたようである。指令された時期に、なにかのサインが送られ、そのとき暗示された行動を起こすようにされていた。滝川は爆破装置が送られてきた時だと睨んだ。なぜなら犯行に及んだ男の頭から、爆発物を受け取った、あるいは準備した記憶が無いからである。警察もそこまでは掴み、催眠療法などで男の記憶を引き出そうとしているが、無駄だと思った。

 そんなヤワな相手ではない。もし記憶を引き出すことができても、男は自殺、あるいは精神崩壊するように刷り込まれているだろう。

 

 推理の最大の根拠は、このA郡T町で、ある日を境に犯罪が一件も起きていないことであった。

 

 周囲の町は、程よく治安が悪く、それまでのT町も似たり寄ったりであった。

 おそらく町ぐるみマインドコントロールされているのだろう。そして首謀者は目的以外には混乱を好まない。

 しかし、こんな状況を長く続けていては、やがては目だって世界中の注目の的になる。聖骸布を手に入れた彼らの行動は早いと睨んだ。

 

 ガツン

 

「ちぇ、またエンストかよ」

 ケントはバンパーを蹴り上げた。

「またなのぉ?」

 妻のジェシカが降りてきて腕を組む。

「ボクも手伝おうか?」

 息子のマイクが窓から顔を出す。

「マイクはミリーを見てて、この状況で起きたら、ぜったいプータレるから」

「うん」

「ロトの10万ドルで、満足すべきだったのよ」

「かもな、でも、このキャンピングカーレースに勝てば100万ドルだぞ!」

「ボク、転校しなくて済むのかなあ」

「ミリー見といてって言ったでしょ」

「だいじょうぶだよ、爆睡してる、ケット掛けてきたし」

「こっちも大丈夫さ、ローンを返すあてなら、他にもあるしな」

「そうね、ロトの分で、取りあえずクリスマスまではしのげるし」

「あ、うん、そうだね、そうなんだ(^_^;)」

 ジェシカは息子をハグし、ケントは、その頭をワシャワシャ撫でて、ちょっと訳ありのレース参加のファミリーの雰囲気ができあがった。

 気づかないフリをしているが、キャンピングカーの直上にはドローンが飛んでいる。

 

 そこに保安官の車が通り合わせた。

 

「あんたらも、トレーラーレースの参加者かい?」

「ああ、でもエンストさ、今日中には隣のS市にまでいきたいんだがね」

「あんた、この坂でスピード出し過ぎたんだよ。4マイル先から続いてるから緩く見えるがね、実際は見かけの倍の勾配がある。どれどれ……こりゃオーバーヒートだな。今日はこれで三台目だ。よかったら町の修理屋に電話してあげるが」

「ああ、仕方がない。頼むよ保安官」

「……デイブ、保安官のジェフだ。三台目の客だ。レッカーで来てくれるか……そう、場所はナビに出てるとこだ。よろしくな……よかったね、これ以上来たらは面倒見切れないところだったってさ」

「保安官、後ろに積んでる立て札は?」

 マイクが聞いた。

「『スピード落とせ』だよ、付け替えに行くところだ」

「もうちょっと早く出してくれればよかったのにぃ……」

「保安官のせいじゃないさ」

 ケントはもう一度息子の頭を撫でた。

「じゃ、神さまのせい?」

「そんな言い方するんじゃないの」

「そう、神さまはみんなお聞きになってるぞ、ぼうず」

「ごめん、お母さん、保安官」

「まあ、T町もいい町だ。一晩ゆっくりしていけばいいさ」

 そう言って親指を立て、保安官は坂を下りていった。

 

「予定通りね、ジャック」

 

 上空のドローンが居なくなったことを確認して、友子のジェシカが肩をすくめた。

「ミリーは、そろそろ限界」

 と、ポチのマイクが後部座席のミリーを指さす。

 ミリーのハナは擬態が解けかけて尻尾で出てきている、車から出さないで正解だった。

 

 まずは敵地潜入に成功ではあった。

 

 ☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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