大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 152『敦煌の災厄を切り抜けられたわけ』

2023-11-18 15:52:34 | ノベル2

ら 信長転生記

152『敦煌の災厄を切り抜けられたわけ信長 

 

 

猪八戒:「やっぱ、そっちが似合ってるブヒ」

孫悟空:「おまえも、ずいぶん板についてきたぞウキ」

沙悟浄:「敦煌で休んだのは正解だッパ」

 

 俺たちは敦煌を後にして東に進んでいる。NPCの三蔵法師もアップデートが進んで、馬に乗りながらお経唱えるようになって、ますますそれらしくなってきた。

 

沙悟浄:「しかし、あの仏の化物どもをどうやってやっつけたんだッパ? 宿に戻って来るなり『ただちに出発だ!』と言われて、慌ただしく出発したきりだ。そろそろ話してくれてもいいッパ」

孫悟空:「そうだな、そろそろ話してもいいだろ、ウキ……」

 実は、あの場を切り抜けたのは俺が活躍したからではない。

 

 あれは、一言主の働きによるものなのだ。

 

一言主:『諸君!』

 指輪サイズとは思えない声に腰を浮かせた諸仏どもはたじろいだ。

釈迦:「ウ、なんだおまえは?」

一言主:「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神。葛城の一言主の大神なり」

釈迦:「ヒトコトヌシ?」

一言主:「そうだ、日出ずる大和の国の神である。故合って、三蔵法師一行の守護を務めておる」

帝釈天:「島国の神の癖に、態度大きいな」

 帝釈天の挑発には乗らずに、一言主は淡々と続けた。

一言主:「我は、良きことも悪しきことも、一言の願いならば、どのようなものでも聞き届けてやる」

帝釈天:「ほう、願いを聞き届けると申すか」

一言主:「いかにも。先ほどより聞いて居れば、釈迦牟尼仏を始め諸仏には様々な期待や願い事がある様子」

釈迦:「様々ではないよ、ここでいっしょに居てもらって、敦煌の仏教を盛んにしてもらいたいんだ」

一言主:「盛んとは抽象的に過ぎる。釈迦のように巨大な仏像に成れということか?」

釈迦:「いや、大きいのは、もう三つもあるし」

一言主:「ならば、第57窟の美人菩薩のように見目麗しい仏画か?」

帝釈天:「いや、あれ以上の美人が来ては57窟から不満が出る」

毘沙門天:「ここを守護する軍団こそ必要だろう」

仁王:「なに? 聞き捨てならんぞ毘沙門、我ら仁王軍団では不足と言うのか!?」

毘沙門天:「いや、聞くと、この三蔵の本性は織田信長であるとか。それならば、仁王諸君と並んで、優秀な護衛隊になるだろうし」

毘首羯磨:「それよりも、莫高窟は700も石窟があるんで、ぜひ、工作機械の充実を……」

薬師如来:「それなら、ぜひ病院を。老齢の仏も多いですし、参詣客の中には体調を崩すものも居て、敦煌の町医者だけでは手が回りませんから……」

羅漢:「それよりも、将来を見据えてお賽銭の運用を……」

 いやはや、仏と言ってもいろいろあるもんだ(^_^;)

一言主:「やよ、仏たちよ。願いは一つである。早く話し合うなり勝負するなりして、一つにまとめよ」

釈迦:「いや、だから……」

帝釈天:「涅槃仏、あんたも起きて……」

涅槃仏:「いや、わしは……ムニャムニャ……」

釈迦:「いや、だからぁ……」

 

――いまのうちじゃ!――

 

孫悟空:「ということで、諸仏が揉めているうちにトンズラしたというわけだウキ」

沙悟浄:「なるほど、そう言う訳だったのかッパ」

猪八戒:「しかし、いろいろ冒険したのは評判になってるみたいブヒ(^_^;)、新聞とかにも出てるブヒ」

沙悟浄:「ああ、この分なら、無事に三国志へ……そして、そのまま洛陽へ! なんとしても兄曹操を思いとどまらせ、戦の無い世の中にしなければ!」

孫悟空:「沙悟浄、素に戻りかけてるウキ!」

沙悟浄:「ああ、すまないッパ(-_-;)」

 三人が熱くなった分、馬上の三蔵は悠々と経を唱えている。NPCとは言え、さまになっている。

 まあ、我々三人がしっかりしていればなんとかなるだろう。

 

 ん…………?

 

 前方から砂煙……続いて、地を揺るがすほどの馬蹄の響き。

 

 なにか来るぞ!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・トモコパラドクス・82『S市Bブロックから』

2023-11-18 09:35:45 | 小説7

RE・友子パラドクス

82『S市Bブロックから』 

 

 

 Bブロックとは、名前の通りB級の住宅街だった。

 50坪ほどの敷地に、30坪ほどの似たような住宅が並び、半分近くが長引く不況で売りに出されていた。遠目には閑静な住宅街だったが、中に入ってみれば、荒廃しかけたアメリカそのものだった。

「「あの家!」」

 ミリー(ハナ)とマイク(ポチ)が指差す通りにケント(滝川)は勢いよくハンドルを回した。

 その家には生活感があった。庭の芝生は伸び放題だが通りから玄関までは踏みしだかれて日常的に人の出入りがあることが知れる。アプローチや玄関前には枯れ葉やゴミが散見され、ここの住人が、あまり、ここでの生活に熱意がないことが伺われた。

「中に人は居ないな」

「でも、ついさっきまで居た気配がするわ」

「「ワケあり……」」

 かけられた鍵を難なく開けて、四人は家の中に入った。

 一階のリビングは、義体の力でなくとも分かる。

 テーブルの上には飲みかけのコーヒーがあるし、半ば開かれた新聞は今日の日付だ。

「三人居たな……ほんの5分ほど前までだ。二階に一人。いったん、ここで話して、この玄関から出て行っている」

「でも、残留思念は希薄……」

「探ってみる!」「ミリーも!」

 クンクン

 マイクとミリー鼻をひくつかせた。

「待って……!」

 ジェシカは両手で二人の鼻を押えた。

「「フガ!?」」

「そうだ、なにか怪しい。これだけの痕跡を残しながら、読まなければ分からない残留思念……おれたちなら、読まなくても見えて当然だ……」

「……トラップかも」

 ジェシカは、ソファーを一撫ですると玄関を指差した。

 
 
 四人は、家を出てブロックの端まで戻った。

 

「じゃ、読んでみるわ」

 ドッカーーーーーン!!!!

 とたんに、その家は前後左右の空き家を巻き込んで吹っ飛んでしまった。

「バリアーを張れ!」

 直後、大量の中性子の洪水が襲ってきた。

「……今の、まともに受けていたらやられていたわね」

「今のは、何をダミーにして読んだ?」

「ソファー……下手に義体のコピーなんか置いてきたら、リンクしているオリジナルまで影響を受けるところだった」

「どの程度の影響?」

「電脳が破壊されていただろうな」

 読み取れたわずかな情報を開いてみた。

 あの家に住んでいたのは、中年の女と少女……親子のようだ。

 父親は……なんと、あの司教!

 しかし、司教は自分の娘だとは思っていない……なんと神の子であると思っている。四人の電脳は司教が強烈なパラノイアであるという結論を出していた。

 その司教が聖骸布を持っている。

 出てくる結論は……何が起こるか分からないということだった。

「水道局。テレポで行くぞ!」

 司教は、もう、このS市には居ない。義体であることを隠す必要もない……というか、とうに四人の正体は分かってしまっている。擬態している必要はない。

 

 まず局長室に行ってみた。

 

 局長は瞬間にフリーズドライされたように死んでいた。

 ポロポロ……

 ジャックが腕を持ち上げると朽ち木のように崩れてしまった。

「ひどい、実の弟を……」

「……司教の力は計りしれんなぁ」

「T町への水道管を!」

「そうだ、水の成分を見極めなきゃ!」

 浄水装置のある建物に行き、送水管を調べた。何も出てこなかった。

「おかしい、確かに、あのモーテルの水はおかしかったのに」

「送水管を調べろ」

「もう調べた。平均的なアメリカの水道水よ。洗濯には使えても飲み水には適さない」

 ポチもハナもイヌ耳イヌ鼻を出して調べている。

「こっちも!」「こっちも!」

 報告すると、ピョンと尻尾まで現れた。

「T町のは純粋な水。東京の水道よりきれい……ん……だんだん水質が悪くなる……他のといっしょになった」

「証拠を隠滅した直後だったのね」

「T町に戻るぞ!」

「「ワン!」」

 T町は、たった今まで人が居た気配。モーテルのオヤジの部屋で、電子レンジが任務終了の「チン」を鳴らしてビーフの良い香りがした。ジョッキの中のビールは、まだ盛んに泡を立てている。

「くそ、どこもかしこも一歩先をいかれてる!」

 滝川が、珍しくいら立ちを顕わにした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士


 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする