大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

プレリュード・2《ウダウダと……前篇》

2020-06-17 06:27:23 | 小説3

・2
《ウダウダと……前篇》   



 

 直美と話したことを思いだしたので……。

 一年の頃は演劇部に入ってました。中三のとき、あるお菓子メーカーのCMのオーディションに合格して、ほんのワンカットの、そのまたその他大勢のひとりだったけど、三か月ほどテレビに出ていた。

 CMの主役はアイドルの黛朱里(まゆずみあかり) 普段はちょっと小悪魔系のアイドルだけど、スタジオの彼女は礼儀正しくて、あたしたちその他大勢にもきちんと挨拶。プロデューサーやらスタッフと話すときは、必ず相手の正面をむいて、きちんと返事。正直目からうろこだった。

 三分バージョンから三十秒バージョンまで、撮るのに丸一日。間に休憩は入るけど、オーディション組は、ちょっとバテ気味。だけど黛朱里は平然としてる……だけじゃなくって、わたしたちをリラックスさせようと、いろいろ話して冗談を飛ばしたり。

 大変やだなあ……と思いながら、憧れてしまった。
 
 高校に入ってすぐに演劇部に入った。映画でえらい賞とった女優さんがO学院の演劇部の出身と聞いて、役者になるんだったら演劇部……今から思うと単純な発想。

 演劇部は期待外れだった。発声練習と肉体訓練は型になってて、それなりに気合い入ってるけど、肝心の芝居の稽古がもうひとつ。

 わたしも、役者になりたいと意識してから、亮介(アニキ)の勧めで、簡単な戯曲やら、演技の教則本を読んではいた。亮介は心理学部だけど、学部の選択で演劇のコマをとってる。実力はともかく、講師の先生がいいようで、勧めてくれるものに間違いは無かった。
 

 演劇部で、驚いたことは、役者が人の台詞を聞いてないこと。大げさに台詞吐くけど、状況に対する反応になってない……つまり、相手の演技への反応になってないから、ただ声と動きが大きいだけ。簡単に言うと大根です。

 もっとびっくりしたのが、創作劇しかやらないこと。

 クラブのロッカーを見ても既成の本は一冊も無い。休憩時間に新感線やら三谷幸喜なんかの芝居の話しても、まるで通じない。シェークスピアやらチェーホフの名前すら知らない先輩が居るのには、ビックリ通り越して寒むくなってきた。

 連休明けに連盟の講習会があった。

 劇団○×△□(これでコントローラーと読む。なるほどプレステのコントローラー)の南野隆いうオッチャンが講師で、呼吸から、エチュードまで教えてくれて、なんだかそんな気になった。
「通年の講習会とかはないんですか?」
 司会の先生に聞いてみた。
「夏休みに、もう一回。そんで地区でも講習会があります。そこでまたがんばろう!」
 トンチンカンな答えが返ってくる。芝居は通年で訓練しなくちゃ身に着かないくらいは、素人でも分かる。

 で、文化祭。

 演劇部の前のダンス部は満員御礼だったけど、演劇部になったとたん潮が引くように観客が居なくなった。

 うちの演劇部は勘違いしている。戯曲も読むことをせずに自己満足の創作劇。一年生のわたしが読んでも戯曲の形になってない。演技は、ただの形だけだし、なんと言っても舞台監督が名前だけ。稽古場の管理も稽古日程の管理もできてない。たった十人の演劇部なのに、演技班と工作班に分かれていて、どうかすると、何日も顔見ない部員もいる。
 あたしは、一応演技班だけど、稽古中人の稽古見てないもんが多いのに違和感。
 そのくせ『U学院演劇部ブログ』の更新には熱心。交代で毎日更新している。中身は、よその演劇部とうちの誉め言葉と「ガンバロー!」のスローガンだけ。あたしに番が回ってきたときに、さっき書いた講習会の感想書いたら、すぐに部長に削除されて、別のプロパガンダに替えられた。

 もう、辞めます。

 夏休み前に宣言。

 だけど、人が足らんとか部員の責任とか言われて足止めされた。たしかに十人だけでコンクールの表と裏を切り盛りするのは難しいだろう。
 わたしは「責任」とか「人情」いう言葉には弱い。結局演技班から降りて工作班に。でも実質辞めたのも同じで、本番前と本番のスタッフの手伝いすることで手を打つ。

 コンクール……バカかと思た。

 五百人入るK高校の観客席に五十人ほどしか観客が入ってない。参加校は十二校やから、一校四人ちょっと。十二校中十一校が創作劇。公式パンフ見たら、93%が創作劇。うちの学校だけが特別じゃないことを実感。府全体がおかしい。

 もう、終わったらほんまに辞めようと思ったよ。

 審査にもびっくりした。

 最初で最後のコンクールでもあるので、最後まで観た。
 ありえない審査結果だった。
 声は聞こえない、話しはよく分からない、幕が下りても「え、これでおわり?」てな感じで、拍手がなかなかおこらなかったH高校が最優秀。うちの学校は二等賞にあたる優秀賞と創作脚本賞。

 審査員どこに目えつけとんねん!?

 ま、こんな話を直美としてたわけ。観客動員だと言われたので、わたしは直美にだけ頼んだ。直美は律儀な子で、わたしに付き合って全部見てくれた。
 直美はブロガーで、その日のうちに観た学校の感想をブログでアップロード。中身は、わたし同様に手厳しい。
「あのブログは、奈菜、おまえの入れ知恵やろ」
 部長から、そう言われた。あたしは直美から、こう言われた。
「観客動員や言うから行ったけど、連盟のサイト見ても会場も時間も書いてない。ちょっとどないかと思うよ」

 ごめんなさい、ウダウダと長くなりました、反省(;^_^。    奈菜……♡


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