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二十数年ぶりの同窓会は、それなりに盛り上がった。
成人した年に開いて以来だから、みんな四十路のいい歳だ。
もう五十代の半ばに見える管理職のやつ。喋る調子は高校生の時のまま……ただし目をつぶっていればという三人娘。未だに独身で人生の折り返しにきて本来の目的で来た婚活派。
ま、この年代の同窓会の悲喜こもごもが、そこにはあった。
オレは、出席の返事を出すのに躊躇があった。
大学は人もうらやむA大学に入った。
前の同窓会じゃ鼻が高かった。それがきっかけで付き合い始めた美穂も来ていた。放送局に入社したのをきっかけに別れた。正解だった。かつての乙女のバラは太めのママになって面影も無かった。亭主がクラスメートの竹田だったので、セオリー通りシカトしている。
オレには、ちょっとした希望があった。
前回の同窓会には来られなかった白羽美耶が来ていないか楽しみにしていた。高校時代は目立たない子だったが、美耶は、大人になれば大化けした美人になると踏んでいる。アイドルの中にも偶に見かける大器晩成タイプの美人だ。
出席予定者の中には入っていたが、宴たけなわになってきた今もまだ来ていない。
顔では業界で鍛えた笑顔でいるが、もう熱は冷めた。
すまん、今から局に戻らなきゃ
幹事の竹田に言おうとして、傍らにあったサンドイッチに手を伸ばした。
誰も手を出さなかった残り物で両横の薄い食パンは乾いてそっくり返っている。まあ、言い訳の小道具だ。こいつを口に入れて、さも予定を思い出したように「すまん」と切り出せばいい。
そうして残り物のサンドイッチを咀嚼して息を飲み込んだふりをし、竹田に言おうとして、本当に息をのんだ。
「みんな、遅くなってごめん!」
なんと、白羽美耶が高校時代そのままの制服で現れた!
一瞬会場がシーンとして、次にどよめいた。
「うそ、美耶、高校生のときのままじゃん!」
「ひょっとして、タイムリープとかしてきた!?」
美耶は、たしかに明るくなったという点を除いて、ニ十数年前の女子高生そのものだった……。
……つづく