つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

立春を前に

2017年01月23日 | 日記・エッセイ・コラム

 

お花屋さんからスイートピーやミモザが届きました。

お寒さは一級レベルですが、少しづつ春に向かって自然は動いているのかもしれません。

昨日の永青文庫さんの所蔵品には驚かされました。

そして、この仕事をしているのが嫌になってしまいそうになりました。

 

何かと比べてしまったら、自分が小さくなるばかり、

また自分にとって本当に大切なものから一瞬でも目をそらしてしまうことになりますね。

まさに暫時不在です。

 

昨年岡田三郎助の風景画をお納めした際、あるお客様が

「火事などに気をつけます」とおっしゃってくださいました。

高価な作品のお買い物、一段と保管にもお気を遣われるのだとお聞きしていましたが、

「この作品を私が持つ間は大切にさせてもらわなければ。

いつか私の手を離れ、次の方にお渡しするまでは責任がありますから。」と

言葉を重ねてくださいました。

また私どものお客様はみなさま、ご所有の作品をとても愛してくださり、

美術品を管理できるギャラリーのようなお部屋をいつか設けたい、小さな美術館のようなものを作りたいというお声もお聞かせくださいます。

私どもがお客様に幸せをいただくひと場面です。

 

 

美術品を集めるということは、楽しいことばかりではありません。

次世代に作品をお残しになる事、資産としての価値などを全くお考えにならないお客様はいらっしゃらないでしょう。

コレクションは選択ばかりを迫られる孤独な作業の繰り返しでもあります。

 

 

抑制と意思。

人としての美しさがもっとも表れるこのバランスの上に

結局はコレクションの個性と質も問われてくるように感じています。

コレクションこそ芸術的、思想的、経済的・・あらゆる分野に通じる

自己表現なのだと思います。

 

 

鈍翁や三渓の時代とは違う、今の時代のコレクションの形を

作品との出会いとお客様との絆の力で新しく模索してゆきたいと私達は切に願っています。

立春を前に、

今年一年も皆さまにご厚情賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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名古屋市美術館 特別展 永青文庫 日本画の名品

2017年01月23日 | おススメの展覧会、美術館訪問

21日土曜日に新春記念展を無事に終えることができました。

最終日にも、いつものお客様のご来店や、お久しぶりのお客様からのお電話などを

頂戴し、大変な励ましをいただきました。

8日間、みなさまにお引き立ていただきましたことに深く感謝申し上げます。

 

昨日はお休みを頂戴し、二人で名古屋市美術館にお邪魔して参りました。

そして14日から開催中の 特別展 永青文庫 日本画の名品 をたっぷり

楽しませて頂きました。

 

永青文庫はご存じ元熊本藩主細川家に伝わる数々の文化財を保存、研究をされている

東京文京区にある施設です。

特に16代当主細川護立は幼少期に大病を患い、それをきっかけに白隠の

禅画の収集をはじめ、刀剣、茶道具、能道具の工芸品、

今回の展覧会の中心になる近代日本画、禅僧書画、東洋美術と収集を広げていきました。

益田鈍翁、原三渓、松方幸次郎などと並び、美術品の収集という行為を通し

画家や日本近代美術史を支え、その価値形成にも関与された日本有数のコレクターです。

 

どの作品を見てもため息が出るばかり、現在どんなに資産がある方でも、これだけの

レベルの作品を蒐集されるのは不可能だろうと思います。

 竹内栖鳳の逸品。

下村観山の存在感が怖い位の一休禅師。

 そして、仙厓の蜆子和尚。

当店の下村観山の蜆子和尚を思い出し、やはり仙厓は一枚上手だなぁと実感致しました。

 これぞ禅画。

 

 白隠の書は 暫時不在如同死人

生きている時間を一瞬でも無駄に、油断して過ごしてしまったら、それはもう死人と同じことだと

いう意味のようです。

 

 特別展は2月26日まで。後期は2月7日よりです。

後期も是非伺おうと思っています。

 

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