少し前になりますが、堂本印象のお軸を入手致しました。
同じ印象の「晴雪」という作品をご紹介致しました時に、印象の雪景は大変珍しいと書かせていただきましたが、
さらにお軸でも雪景にご縁をいただきました。
印象作品が印象作品を呼び、珍しい雪景がもうひとつの雪景を引き寄せたということだろうと思えます。
「雪霽」
はれ雪 と 雪はれ
こちらのお軸の「雪霽」は、雪が今まさに降っているように見受けられます。
そして、その吹雪の中を男性らしき人が歩いています。
堂本印象はおよそ六十年に及ぶ画業に、画風の転換を多く繰り返した日本画家です。
歴史画や宗教画、仏教画、戦後の女性現代風俗画、そして晩年の抽象画。
元々西陣織の龍村工房の図案家として出発した印象のその自由な挑戦は、止まることを逆に恐れていたかのようです。
「恒世印象」のサインは、戦後間もなくから渡欧を経て抽象の作品を作り上げる前までの時期に使われたようです。
私自身が最近、堂本印象の特に戦後の60歳〜晩年の80歳までの作品に再び興味を持ち始め、その作品を多く扱わせていただくようになりました。
価格が下がり、扱いやすくなったということもありますが、戦後の風俗的な明るい色調の作品の中にさえも、印象作品には何か少しシーンと静まり返った寂しさや孤独感が感じられるような気がするのです。
、
降りしきる雪の中に独り。
その雪の明るさ、暗さ。
細いお軸をスルスルとほどけば、そこに一面の雪景色が広がります。
河北倫明氏が京都国立近代美術館館長でいらしたときに、堂本印象展に寄せてこんな言葉を残していらっしゃいました。
「画伯の芸業は、私には何か昔ながらの色即是空、諸行無常といった内容を、裏側に匂わせているような気がしている。あの明るく、新しく、華やかな表現が、文字通り、明るく、新しく、華やかであればあるほど、かえって果敢ないもの、空なもの、無情なものがどこかにぴったりと寄りそうている感じである。そういう点では、画伯の芸術は、無常感に裏付けられた日本的装飾観の特異な近代版であったということになろうか。いずれにせよ、日本人の性情のある一面を鋭い形で押し出した異色の仕事であったと密かに私は解釈している。」
堂本印象 軸 絹本 「雪霽」 共箱
画面サイズ 45×51㎝
軸全体 143×66㎝ 税込 297,000