先日記事をUPさせていただいてから大変ご好評をいただいております「Y氏のコレクション」、パート2をご紹介させていただきます。一応の完結編です。
森本草介 プルーン
お納めしたのは、もう随分以前のことになりました。良い作品は、画商の手元にいる時間は短く、コレクター様からコレクター様に、市場という表に顔を見せずそっと収まる場所を選んでいくものです。
先日の小磯作品も森本もこの棟方志功も、Y様には小さいながら力のある作品をお選びいただく事も多くありました。こちらは皆さまの記憶にも新しい作品だと思います。
佐橋と私の勤めておりました画廊は、棟方志功作品を数多く扱いました。「扱わせていただく時は最高の棟方志功を!」
もはや晩年という言葉を用いなければならないのは辛い事ですが、晩年の佐橋の扱った最後の棟方に相応しい作品だと思っています。
こちらは昨年の秋、杉山寧展でお求めいただいた鯉です。一応素描扱いになります。
杉山寧作品を多くお選びくださるお客様。勿論、同じ鯉の本画もお持ちくださっています。
茶色の色画用紙にオレンジ色の鯉 幽玄の世界です
母は"尾のしなり方から水の存在を感じる"と 別に波が描かれているわけではないのですが 水を感じ動きが見られるのです 杉山の実力恐ろしですね
杉山作品はどれもはずれがない
はずれは世に出さない??
どの作品を購入しても間違いがない むつかしい人物だったようですが 絵を見ているとその
完成度にスキがなく安心してみていられますね
私のお願いに応じ、コメントもお寄せくださいました。
杉山寧作品に「隙がない、安心して見ていられる」とお感じになる、この感覚こそ、このお客様の個性だと私はいつも思っています。今は90代になられるお母様とお2人のお暮らしです。お母様は日本画を習っていらしたので、やはりその眼力もY様同様、時にはそれ以上だと感じさせていただく事が多くあります。
須田国太郎の薔薇
井上靖が別冊太陽の"井上靖の世界"に "須田さんの作品には
東洋的静けさがある"とあり
佐橋さんに須田国太郎作品ありませんか?と相談しました
アッと言う間に作品が東京から出てきたようです
懐かしいですね
暗いからイヤと言う人もいますが なぜか母は"重々しくていい"と見つめています
暗い中の光 左の引っ掻きは
光をあらわしているのかなと
思います いつまでも飽きずに
眺めていられる作品ですね
そしていつまでも静けさがわからないです
私より少しお兄さんでいらっしゃいますが、「いつまでも須田の東洋的静けさがわからない」とおっしゃる所が、若々しく、真っ直ぐで素敵だなぁと思います。
確かに須田はわからないところの多い画家だと私も思います。
もしかしたら、東洋的静けさは薔薇より風景画などに強く感じられるものかもしれませんね。
ここ2年間
暗い絵を見る力がなかったです
先日の須田展でやっとこの絵を
出してみる気分になりました
「暗い絵」というお言葉をよくお使いになられるのも、このお客様の個性だと感じさせていただきます。今回の須田国太郎展のご招待券をみなさまにお渡しできましたのは、この展覧会にご所蔵品をご出品になられた別のお客様のお心遣いによるものでした。
コレクター様同士が、それぞれに繋がり、精神的に支え合っていただく。
画廊の仕事の新しい、美しい形。そしてとても難しい形。私は今まだそれを形にできないこの店の、ここにいます。
この記事にご協力いただきましたY様にお礼のメールを差し上げると
ありがとうございます
作品によっては、私が拝見している横で佐橋さんが
それは先生のお好みではないですね?と仰り 図星でビックリした事がよくありました
20年も30年もご一緒させていただいていると 私の感覚を良くご存知なんだと、、
Y氏のコレクションにみなさまは何をお感じくださいましたでしょうか?
今回ご紹介させていただいた作品はほんの一部でまだまだ沢山の作品をご所蔵くださっていらっしゃいますが、この数点からでも、確かにこのY様の人としてのお姿をみなさまに想像していただけたのではないかと思っています。
コレクションはお客様お一人おひとりの人生の表現、物語です。
佐橋はその事を念頭に、だからこそ、自分と私の選ぶ作品を大切にさせていただいて参りました。
お客様のコレクションと私共のコレクションが交わる時、そこに仄かなぬくもりと希望が生まれます。
佐橋に長くご厚情を賜わりましたY様に心よりの感謝を申し上げ、また機会をみてそのコレクションをご披露いただこうと思っております。
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