IID 肩・胸郭から足首
肩・胸郭部から順次に股関節、膝、足首と運動を進めます。
IID-1 肩・胸郭の回転運動
この運動の狙いは胸郭構造の諸関節、主に胸椎部および肋骨部の運動にあります。その運動を誘導するために肩・腕の動きを活用することにします。
両足を肩幅に開いて立ちます。両手の指を交互に組み合わせて、やや前かがみにした胸の前におき(写真IID-1)、上体を左方向から「コマの頭ふり運動」のように反時計方向に回転させます(写真IID-2)。この際、腰から下は動かないように固定して、肩と上体の胸郭部だけ回転させるようにすることが重要です。
左回り、ついで右回りの回転をそれぞれ4回(4点呼)ずつ、2回繰り返します。
写真IID-1
写真IID-2
IID-2 腰の回転・股関節の運動
両足を肩幅に開いて立ち、両手を腰に当てます。直立に近い姿勢(写真IID-3)から腰を後ろ、左(写真IID-4)と時計方向に回転させます。時計方向に4回(4点呼)、ついで反時計方向に4回(4点呼)、それぞれ2回繰り返します。
写真IID-3
写真IID-4
IID-3 膝関節部の運動
両足をやや開き、腰をかがめ膝を曲げて両手をそれぞれ左右の膝がしらに当てます(写真IID-5)。両手の助けを借りて、両膝を同時に右、後(写真IID-6)へと時計方向に回転させます。時計方向に4回(4点呼)、ついで反時計方向に4回(4点呼)、それぞれ2回繰り返します。
写真IID-5
写真IID-6
そのままの姿勢で、曲げた両膝のお皿の上縁に両手の手首を軽く当て、大腿四頭筋の腱を軽く押さえます。(写真IID-7)。脚を伸ばしながら、軽く当てた手首で大腿四頭筋を上方に押し上げるようにします(IID-8)。この動作を4回(4点呼)行います。
写真IID-7
写真IID-8
注意すべきことは、手で膝を後方に力強く押し込むのではなく、膝を伸ばすのに合わせて大腿四頭筋の下部を上方に押し上げるようにします。
ついで、両手の手刀部をお皿の下方、膝蓋腱部に軽く当てます(写真IID-9)。脚を伸ばしながら、手刀で膝蓋腱に圧力をかけていき、手刀部がお皿と脛骨との間にめりこんでいくようにします(写真IID-10)。この動作を4回(4点呼)行います。
写真IID-9
写真IID-10
IID-4 足首関節部の運動
直立姿勢にして右脚を挙げて、左足でバランスよく片足立ちします。右脚の向こう脛の下方、足首の上方に左手を軽く当てて、右脚を支えます(写真IID-11)。右足の足先を正面向きから右方、下方(写真IID-12)へと、時計方向に8回(8点呼)回転させます。
写真IID-11
写真IID-12
ついで右足で片足立ちして、同じ要領で、左足足首を反時計方向に8回(8点呼)回転させます。
次に、同じ要領で順次左足立ち、右足立ちして、それぞれ右足および左足の足首を、先とは反対方向、すなわち、右足は反時計方向、左足は時計方向に回転させます。それぞれ8回(8点呼)回転させます。
[解説]
肩・胸郭部は呼吸運動にとって非常に重要な働きをしている部位です。肩・胸郭部の運動(IID-1)では、上半身全体を大きく回転させるならば、胸郭部も同時に回転に加わりますので、一見その方が効率的に思われる。しかし身体を回転させる場合(屈曲でも同様だが)複数の関節を含む部分の運動では、次の点に注意する必要があります。
上半身全体としてある一定の大きさの回転(または屈曲)運動をしようとした場合、可動域が広い関節が、硬くて動きが制限されている箇所の動きの不十分さを補償して、全体として目的を達成することになるということである。実際には、硬く可動域の狭い関節を鍛錬して柔軟にしたいにも拘わらず、逆に可動域の広い関節が主に鍛錬される結果になる可能性があります。
以上の理由から、本操体法では、腰から下は固定して動かすことなく、できるだく肩と胸郭の部分だけ選択的に回転させるよう工夫してあります。さらにこの運動は両腕で誘導する形で、肩も動員した運動です。肩が凝るような仕事に熱中している際に、この運動を数回行うならば肩凝りは避けることができるでしょう。
股関節および膝関節の回転運動については、解説の必要はないでしょう。
脚を伸ばしながら膝関節のお皿(膝蓋骨)の上下で軽く手で押す運動(IID-3)については解説が必要であろう。太もも(大腿)の前部には大腿四頭筋と呼ばれる大きな四つの筋肉があり、それらの腱の一部が合流してお皿に、またお皿を跨いで脛骨に付着しています。その腱を伸長させることがこの項の目的の一つです。
また膝部でお皿の上下には皮下、筋肉と骨との間および靭帯と骨との間に滑液包と呼ばれる液体(滑液)で満たされた袋(包)があります。その役目の一つは、関節が動く際に筋肉や靭帯と骨との間の摩擦を和らげ緩衝することです。
それら滑液包の内容は膝関節の関節腔とつながっているので、膝関節の屈伸をしながら外部から滑液包に圧力を掛けたり、引いたりすることで、関節液の動きを高めようと意図した運動でもあります。
足首の回転運動(IID-4)の中では、片足立ちの状態で、足首運動をする反対側の脚を高く挙げるようにしています。この項の主目的は足首を回転させ、柔軟性を高めることにありますので、姿勢はどうでもよさそうに思われます。しかし片足立ちによる‘バランス’感覚の養成という意味も含めております。記載の要領で運動を行うようお勧めします。
さらに足首の運動を始める前に、しっかりと片足立ちの姿勢を取り、バランスよく姿勢を保っておくと、挙げた足の足首運動を安定して行うことができます。
なお、片足立ちができない場合は、壁または柱に腰(または背中)を当てて、姿勢を保って足首運動を行うとよい。ただし繰り返して片足立ちを試み、鍛えていくうちに片足立ちは可能となります。諦めずに繰り返し練習することが大事です。
肩・胸郭部から順次に股関節、膝、足首と運動を進めます。
IID-1 肩・胸郭の回転運動
この運動の狙いは胸郭構造の諸関節、主に胸椎部および肋骨部の運動にあります。その運動を誘導するために肩・腕の動きを活用することにします。
両足を肩幅に開いて立ちます。両手の指を交互に組み合わせて、やや前かがみにした胸の前におき(写真IID-1)、上体を左方向から「コマの頭ふり運動」のように反時計方向に回転させます(写真IID-2)。この際、腰から下は動かないように固定して、肩と上体の胸郭部だけ回転させるようにすることが重要です。
左回り、ついで右回りの回転をそれぞれ4回(4点呼)ずつ、2回繰り返します。


IID-2 腰の回転・股関節の運動
両足を肩幅に開いて立ち、両手を腰に当てます。直立に近い姿勢(写真IID-3)から腰を後ろ、左(写真IID-4)と時計方向に回転させます。時計方向に4回(4点呼)、ついで反時計方向に4回(4点呼)、それぞれ2回繰り返します。


IID-3 膝関節部の運動
両足をやや開き、腰をかがめ膝を曲げて両手をそれぞれ左右の膝がしらに当てます(写真IID-5)。両手の助けを借りて、両膝を同時に右、後(写真IID-6)へと時計方向に回転させます。時計方向に4回(4点呼)、ついで反時計方向に4回(4点呼)、それぞれ2回繰り返します。


そのままの姿勢で、曲げた両膝のお皿の上縁に両手の手首を軽く当て、大腿四頭筋の腱を軽く押さえます。(写真IID-7)。脚を伸ばしながら、軽く当てた手首で大腿四頭筋を上方に押し上げるようにします(IID-8)。この動作を4回(4点呼)行います。


注意すべきことは、手で膝を後方に力強く押し込むのではなく、膝を伸ばすのに合わせて大腿四頭筋の下部を上方に押し上げるようにします。
ついで、両手の手刀部をお皿の下方、膝蓋腱部に軽く当てます(写真IID-9)。脚を伸ばしながら、手刀で膝蓋腱に圧力をかけていき、手刀部がお皿と脛骨との間にめりこんでいくようにします(写真IID-10)。この動作を4回(4点呼)行います。


IID-4 足首関節部の運動
直立姿勢にして右脚を挙げて、左足でバランスよく片足立ちします。右脚の向こう脛の下方、足首の上方に左手を軽く当てて、右脚を支えます(写真IID-11)。右足の足先を正面向きから右方、下方(写真IID-12)へと、時計方向に8回(8点呼)回転させます。


ついで右足で片足立ちして、同じ要領で、左足足首を反時計方向に8回(8点呼)回転させます。
次に、同じ要領で順次左足立ち、右足立ちして、それぞれ右足および左足の足首を、先とは反対方向、すなわち、右足は反時計方向、左足は時計方向に回転させます。それぞれ8回(8点呼)回転させます。
[解説]
肩・胸郭部は呼吸運動にとって非常に重要な働きをしている部位です。肩・胸郭部の運動(IID-1)では、上半身全体を大きく回転させるならば、胸郭部も同時に回転に加わりますので、一見その方が効率的に思われる。しかし身体を回転させる場合(屈曲でも同様だが)複数の関節を含む部分の運動では、次の点に注意する必要があります。
上半身全体としてある一定の大きさの回転(または屈曲)運動をしようとした場合、可動域が広い関節が、硬くて動きが制限されている箇所の動きの不十分さを補償して、全体として目的を達成することになるということである。実際には、硬く可動域の狭い関節を鍛錬して柔軟にしたいにも拘わらず、逆に可動域の広い関節が主に鍛錬される結果になる可能性があります。
以上の理由から、本操体法では、腰から下は固定して動かすことなく、できるだく肩と胸郭の部分だけ選択的に回転させるよう工夫してあります。さらにこの運動は両腕で誘導する形で、肩も動員した運動です。肩が凝るような仕事に熱中している際に、この運動を数回行うならば肩凝りは避けることができるでしょう。
股関節および膝関節の回転運動については、解説の必要はないでしょう。
脚を伸ばしながら膝関節のお皿(膝蓋骨)の上下で軽く手で押す運動(IID-3)については解説が必要であろう。太もも(大腿)の前部には大腿四頭筋と呼ばれる大きな四つの筋肉があり、それらの腱の一部が合流してお皿に、またお皿を跨いで脛骨に付着しています。その腱を伸長させることがこの項の目的の一つです。
また膝部でお皿の上下には皮下、筋肉と骨との間および靭帯と骨との間に滑液包と呼ばれる液体(滑液)で満たされた袋(包)があります。その役目の一つは、関節が動く際に筋肉や靭帯と骨との間の摩擦を和らげ緩衝することです。
それら滑液包の内容は膝関節の関節腔とつながっているので、膝関節の屈伸をしながら外部から滑液包に圧力を掛けたり、引いたりすることで、関節液の動きを高めようと意図した運動でもあります。
足首の回転運動(IID-4)の中では、片足立ちの状態で、足首運動をする反対側の脚を高く挙げるようにしています。この項の主目的は足首を回転させ、柔軟性を高めることにありますので、姿勢はどうでもよさそうに思われます。しかし片足立ちによる‘バランス’感覚の養成という意味も含めております。記載の要領で運動を行うようお勧めします。
さらに足首の運動を始める前に、しっかりと片足立ちの姿勢を取り、バランスよく姿勢を保っておくと、挙げた足の足首運動を安定して行うことができます。
なお、片足立ちができない場合は、壁または柱に腰(または背中)を当てて、姿勢を保って足首運動を行うとよい。ただし繰り返して片足立ちを試み、鍛えていくうちに片足立ちは可能となります。諦めずに繰り返し練習することが大事です。