最近の「新書」のトレンドに乗った本です。
正しいものを追求するより、不要・無用のものをはじいて有効性の確率をあげようという姿勢は、いかにも功利主義・現実主義的な印象を受けます。
が、そうは言っても、玉石混交の議論・解説・意見が蔓延しているという現状を踏まえると、著者のアプローチも確かに有益ではあります。
著者は、自らの「問題を解釈するに当たっての基本姿勢」を
(p93より引用)
①問題を適切に分割し
②個々のターム(用語)の定義を明確にし
③パートごとにデータによる検証を行う
というものだと自己分析しています。
そういう著者自身の「分析的思考」のプロセスをHow Toの形で開陳した本だとも言えそうです。
著者は、まず、人々が誤った解釈を正しいものと信じたり、意味のないもしくは有害な提言を受け入れたりする理由・仕掛けについて説きます。
簡単に言えば、それは、
(p51より引用) 気分にかなうという理由で納得し、
→何となく常識化し
→動かしがたい空気となり
→思考や言論が支配される
というプロセスだと言います。
そして、次に、誤った議論や怪しい解説を見抜くための5つのチェックポイントを提示します。
- 定義の誤解・失敗はないか
- 無内容または反証不可能な言説
- 難解な理論の不安定な結論
- 単純なデータ観察で否定されないか
- 比喩と例話に支えられた主張
本書には、多くの「ダメな議論」の例示・例文が載せられています。それらは、一見もっともらしく耳ざわりのよい論説です。
著者は、「5つのチェックポイント」を用いて、それらの議論の問題点を顕わにしていきます。
著者の解説を辿っての私なりの感想ですが、多くの立論において、「定義の明確化」と「論拠データの信憑性の担保」がなされていれば、「論理の展開」によって結論が歪むことはないだろうと思いました。
ダメな議論―論理思考で見抜く 価格:¥ 714(税込) 発売日:2006-11 |