本書では、著者の日米欧でのビジネス経験を踏まえた「日米もしくは日米欧の比較論」がいくつか提示されています。
その中でも、私として関心をもった「ブランド」についての著者の指摘をご紹介します。
そこでは、著者のルイ・ヴィトンジャパンの社長経験から、いわゆる「高級ブランド」の日米欧の特徴を分りやすく述べています。
まずは、「アメリカ」です。
(p148より引用) アメリカ発ブランド-我慢できず売上至上主義に走る
・・・アメリカ企業は一度ブランド価値が向上すると、それを「刈り取り」に入るのが早い。すなわち、「名前貸し」のライセンス商売を始めるのである。・・・気がついてみると、丹念に育てた後宮ブランドが中国製の靴下についているのを発見したときは、もう手遅れというわけだ。
アメリカ企業に多く見られる「短期利益追求」の姿勢がここにも表れています。この性向は、「高級ブランド戦略」という面では不利に働くようです。
つぎは、「ヨーロッパ」。
こちらは「高級ブランド」発祥の地です。
(p150より引用) ヨーロッパ発ブランド-顧客ニーズを聞かない商品開発で「ワクワク感」をつくる
・・・実際にルイ・ヴィトンの商品開発では、「顧客のニーズをあえて聞かない」雰囲気があったように思う。・・・
そこには、トップブランドの使命は市場を創造することであり、大衆や競合に迎合し、市場を追従することではないとの矜持があったように感じられる。
同じ趣旨のことをHONDAの本田宗一郎氏も語っていました。
「ものを作ることの専門家が、なぜシロウトの大衆に聞かなければならないのだろうか。それでは専門家とは言えない。どんなのがいいかを大衆に聞けば、それは古いことになってしまう。シロウトが知っていることなんだから、ニューデザインではなくなる。大衆の意表にでることが、発明、創意、つまりニューデザインだ。」
トップブランドのクリエーターの共通の気構えです。
そして、最後は「日本」。
(p152より引用) 日本発ブランド-顧客のニーズ追従型ゆえにマージンが取れない
日本市場の「顧客至上主義」は基本的には日本の強みなのだが、・・・イノベーションが必要な局面になると、発想の狭さが露呈し後塵を拝するはめになることが多い。
このやり方は、いったん発売された新コンセプトの製品の二番煎じを、より高い品質で、より低いコストで提供する場面では威力を発揮する。・・・
・・・二番煎じ企業は高いマージンが取れず、それゆえに量をさばいて利益を確保しようとする。そして、その過程で大量、低価格のブランドイメージをつくってしまうのである。
「顧客重視」は正しい道です。が、その道をたどっても「高級ブランド」の世界では、トップランナーにはなりえないということです。
ただ、「高級ブランド」といっても、その購入者層は多様です。
アメリカ流や日本流のブランド戦略も、ある種の「ブランド支持層」には有効な攻め手でもあるのでしょう。
そういったターゲット層を対象にした商品/サービスを「高級ブランド」と位置づけるかは定義の問題ではありますが・・・。
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