著者の三木谷浩史氏は、「楽天」の会長兼社長、現代インターネットビジネスの起業家の代表格の方です。
本書は、その三木谷氏のビジネスに対する姿勢、それを成功に導くための要諦を具体的に92項目に章立てして紹介したものです。
もちろん、語られているものの多くは、従前からいろいろな方が述べられていることと同じです。以下のような「リスク」に対する意味づけとかは、その一例です。
(p136より引用) リスクを取ることがチャンスにつながるのは、リスクのある場所には、競争者が少ないという大きなメリットがあるからだ。
が、中には、三木谷氏ならではのアドバイスや言い回しも見られて、なかなか興味深いものでした。
たとえば、本書の冒頭で語られている「夢」についての三木谷氏の台詞です。
(p2より引用) 夢と現実は違うなどという皮肉に、惑わされてはいけない。それは、夢を現実に変える努力を怠った人間の、悔し紛れの言い訳に過ぎない。
また、「未来を見る努力」についてのコメントも、三木谷氏らしさが表れています。
(p39より引用) 明日、何が起きるかなど誰にもわからない。それは事実だ。けれど、その不確定の闇の向こう側に、未来の姿を見る努力なくしては、未来を開くことなどできはしない。
さて、その他のフレーズで、私の関心を惹いたものをいくつか覚えに記しておきます。
まずは「ブランド」の将来形についての三木谷氏の考えです。
(p36より引用) ブランドは所有する人のステータスを示すものではなく、所有する人の理念を表すものになっていくだろう。個人の消費活動は、ある種の“投票”の役割を果たすことになる。多くの人の支持を得た企業がより大きく成長し、その企業の理念が社会を変えていくことになる。
ということは、「ブランド」はその企業の理念を象徴するものでなくてはなりませんし、そもそも、企業には「掲げるべき明確な理念」がなくては存在し得ないことになります。
もうひとつ、三木谷氏が考案した「2ミニッツ・コール」というルールについて。
(p139より引用) ネットで楽天市場に資料請求のメールが来たら、必ず2分以内にその資料請求をして下さったお客様に、担当者が電話をするというシステムだ。・・
資料請求というアクションが、たとえば契約という次の段階に進む可能性は、それだけで増える。実際にこのシステムを導入した楽天市場では、かなりの効果を上げている。
インターネットビジネスにおいては、極力人手をかけたオペレーションは省こうとする傾向が顕著ですが、三木谷氏は、肝になる瞬間には「人手」を厭わないようです。
ヴァーチャルとリアルのコミュニケーション連携のひとつの効果的な実例ではありますが、ベタな手法で、かえってあまり気づかないものです。
最後に、「0.5%の努力」を大事にすべきとの三木谷氏のアドバイスです。
(p278より引用) 誰もが努力をしているのが、競争社会の前提だ。・・・
にもかかわらず、実際の製品や、サービスには明らかな差がある。これは、どういうことだろう。その差はいったいどこから生れてくるのか。
僕は最後の0.5%の努力の差だと思っている。
限界まで頑張ることは、誰にでもできる。限界まで頑張ったその上に、さらに0.5%努力を重ねられるかどうか。その差なのだ。
・・・僅かな差であっても、限界の上に積んだ0.5%は、決定的に大きな差になる。なぜなら、その僅かな差を敏感に感じ取ってしまうのが、人間の感性というものの性質だからだ。
この指摘には、私としても大いに反省させられました。
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