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能動的な構え (アリストテレスの言葉―経営の天啓(古我知史・日高幹生))

2011-08-17 09:35:57 | 本と雑誌

Aristoteles  アリストテレス哲学を経営学と結びつけた指摘は、以前読んだ野中郁次郎氏の「美徳の経営」にも詳しく紹介されています。
 その著作の立論において重要なコンセプトは、「フロネシス(賢慮)」です。野中氏の定義によると、賢慮とは「個別具体の場において、その本質を把握しつつ、同時に全体の善のために最良の行為を選び実践できる知恵」とされています。

 本書の著者たちの主張も、この野中氏の指摘と軌を一にしています。

 ギリシャの哲学者は考察のスタイルは、ソクラテス・プラトンをはじめとして「対話」を重んじるものでした。今日の企業でいえば「コミュニケーション」の重視です。

(p108より引用) 組織における共通の利益を実現するために、個人としての独立性、自律性を持ち、自身内での問答的推論の対話ができる個人が組織内の同じく主体的な他者と問答的推論の対話をしながら、一所懸命努力することが、住みやすい組織風土や文化を創造するのである。

 このコミュニケーションの活性化はイノベーションに繋がっていきます。

(p109より引用) さらに大事なことは、これが組織内部から発して、外部とのネットワーキングに拡張していくことである。・・・
 多様性の深い交錯によって、異種交配による革新が生じる。これが一企業の組織内に留まらず、広く外部を巻き込み、それに目標のベクトルをうまく合わせることで「オープンイノベーション」が実現するのである。

 コミュニケーションにより、組織内に知識が集積される同時に、それらの組織間交流により知識の有機的化学反応が発現するのです。

 もうひとつ、アリストテレスの哲学の中核には「中庸」の理論があるといいます。
 この「中庸」は「適度」とか「中間」とか「足して二で割る」といった概念とは全く別ものです。

(p197より引用) 「中庸」とは、あらゆる手だてを尽くして情報を収集したうえでの正確な情勢判断と、それに基づく果断な意思決定という意味を内包するような概念であり、ギリギリの現実に直面しその打開のための判断基準とは、というところから導き出されたものであると感じる。単に自分のわかっている範囲、見えている範囲での判断、というレベルを超えたハイパーな想像力の発動が必要である。

 変化への対応を前提とした柔軟ではあるが考え抜いた構えというイメージですね。この概念を組織論に敷衍するとドラッカーのメッセージと軌を一にします。

(p115より引用) 「組織設計とは唯一の最善の方法の探究ではなく、リスクをいとわない意思決定の連続だと結論づけることができる」・・・
 組織体制に正解はないし、絶対もない。軸足を明確にした変化への適応力、すなわち「中庸」をビルトインすることから始めることしかないのだ。

 著者は、この「中庸」という概念をリーダーシップ論においても展開しています。

(p197より引用) 「発意」がリーダーシップの必要条件だとしたら、「中庸」をいくための手立てを尽くすことこそがリーダーの十分条件、と言えるかもしれない。「人事を尽くして天命を待つ」という言葉もあるが、知的活動という意味においても組織として、あるいは個人としてとことん考え抜かれた結果の決断と、安直な準備による安易な妥協としての決断の差は「納得性」という形ではっきり出るのである。

 この能動的な姿勢としての「中庸」という捕らえ方は、とても新鮮です。


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