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一切なりゆき 樹木希林のことば (樹木 希林)

2020-11-23 13:01:34 | 本と雑誌

 樹木希林さんに纏わる著作は、以前も、「この世を生き切る醍醐味」「樹木希林 120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ」を読んでいるので、これが3冊目になります。なのでいくつかの有名なエピソードはダブりますが、この本が一番“樹木さんの自然の姿が浮かんでくる”ような気がします。

 まずは「第1章 生きること」から、樹木さんらしい台詞を書き留めておきます。

(p42より引用) 終了するまでに美しくなりたい、という理想はあるのですよ。ある種の執着を一切捨てた中で、地上にすぽーんといて、肩の力がすっと抜けて。存在そのものが、人が見た時にはっと息を飲むような人間になりたい。形に出てくるものではなくて、心の器量ね。

 お話しされたのは1996年ですから、樹木さんは53歳、まだそれほどのお歳ではない頃です。“心の器量”、いい言葉ですね。

 次に、「第4章 仕事のこと」から。

(p132より引用) 私はお仕事で関わっている人達を、自分も含めて俯瞰で見るようにしているんです。そうすると自分がその場でどんな芝居をするべきかがとてもよく分かる。

 この「俯瞰」という視座は、よくビジネス書とかで「仕事への取り組み方」として勧められるのですが、ポイントは“自分も含めて”という点なんですね。改めて樹木さんの言葉を読んで意識し直しました。
 「俯瞰しろ」というと、私もそうでしたが、「自分自身が高い見渡せる場所に移動」してしまうんですね。つまり「俯瞰した視野には自分がいなくなる」わけです。これでは、自分のなすべき役割がわかるはずがありません。こんなことを誤解していたとは、心底情けないです・・・。

 そして、「第6章 出演作品のこと」から、「夢千代日記」で共演した吉永小百合さんを評して。

(p164より引用) (吉永) 小百合さんは見かけよりもずっと頑固ですから。最初はわかりませんでしたけど、しばらくして映画の仕事を一緒にして、その頑固さに気づいたとき“あ、これはいいな”と思いましたよ。頑固というよりも、自分の意志をきちんと貫く芯の強さを持っている。そういうものを積み重ねてきた結果、なるべくして、今日に至っているのではないでしょうか。
 ・・・やはりあの夢千代という役は、誰にでもできる役ではないんです。『夢千代日記』が成功したのは、芯の部分で決して揺らぐことのなかった、吉永小百合という役者がいたからなんですよ。

 確かに「夢千代日記」は名作でしたね。日本海側のうら寂しい温泉町の風情が今でも印象に残っています。
 ほぼ同い年(樹木さんが2歳年上)の吉永さんと樹木さん、タイプも考え方も異なっているのですが、生き様としての根っこのところで相通じるものがあったのでしょう。

 お二人が共演した作品「夢の女」の監督坂東玉三郎さんとの対談でもこう語っています。

(p169より引用) ある時期まではきらきら輝いているのに、気づいたら面変わりして、佇まいもすっかり変わってしまう。そうやって自分の人生を粗末にしている女優さんは少なくないんです。でも、小百合さんは自分の人生、生活、役を大事にしながら、失敗も成功も含めて自身の糧としつつ、そこにしっかりと生きている。
 玉三郎さんがこういったんですよ。「だって、希林、見てごらんよ。結局、小百合さんに目がいっちゃうんだよ」って(笑)。やはり、ただすっと立っているだけで、凛とした生きざまが見える女優さんはなかなかいないし、別にお世辞でもなんでもなく、そう代わりがいるものではないんですよ。

 私からみると、吉永さんも樹木さんも、お二人とも“素晴らしい女優”だと思います。
 演じている姿ももちろんですが、その魅力的な人柄は「肉声でのお話ぶり」からしっかりと伝わってきますね。

 

 

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