いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。
松岡正剛さんの著作は久しぶりです。
もともとは10年ほど前の週刊誌への連載記事の再録ですが、それをベースに現在までの小文を大幅に追加したものとのことです。正剛さんが切り出したキーワードと写真(撮影:太田真三さん)とのシナジーが楽しみで手に取ってみました。
さっそく、その中身ですが、冒頭記したように「週刊ポスト」の連載なので“文章”は軽めのエッセイ・テイストで、いつもの “編集をコンセプトにした論考” とはかなり趣きは異なっていましたね。とはいえ、その中でも、ちょっと“正剛”色の出ていると感じたところをいくつか書き留めておきます。
まずは、「苗代」がテーマの小文から。
(p222より引用) ここには独特の日本流の方式がある。グローバル・スタンダードなシーズ(材料)やコード(方法)を海外から取り入れても、それをいったん日本の風土や仕組みの中で選別編集し、そのうえで優秀な農産物や工業製品にしていくという方式だ。そこには「育む」という方法が生きている。
このあたりの言いぶりは、妙に心地よく響いてしまいます。
もうひとつ、「纏う」と題する一文から。
(p403より引用) 半纏が男の意気地だとすると、女の意気地はイキジと読んで、襦袢や半襟や染め柄で勝負した。これが「粋」である。男女を問わず、こうした意気地にピンとくる者たちは「通」、わからんちんは「野暮」だった。
何にせよ、江戸っ子では逃げ腰やわからんちんが嫌われる。二ツ返事で正念場を引く受けるのが「勇」(いさみ)だったのである。
こういった「語句(コンセプトワード?)」の出自をテンポよく語るくだりも “セイゴオ節” ですね。
ただ、読み終わってみて、どうでしょう。この本、ちょっと私には合いませんでした。
チャレンジングな企画だとは思いますが、「日めくりカレンダー」のようなパラパラと乾いた感じがして、一枚一枚の写真を受け止めてそれに呼応する正剛さんの感性を味わうだけの力量が私にはなかったようです。残念。