
↑土壁を落とした軸組、屋根付きの倉庫の中で、修復中。
先週、立冬を迎え、紅葉も見頃な熊本です。
皆さまの地域では、いかがでしょうか。
先週末、熊本県建築士会のヘリテージマネージャーの研修会に、
やっと参加できました。(まだ、2回目)
今月は、今週末も含め、建築を見るフィールドワークの講義です。
紅葉狩りならぬ文化財狩り!?でしょうか。
県下で修復が進む木造の文化財の現場にて、
その様子を拝見するとともに
立ち入れる部分を一部、実測してみるというものでした。
( 所有者の方への配慮で、場所や詳細は伏せます)
講義担当は、歴史的建物が専門の大学の先生です。
実際の現場案内は、設計監理の方。
↓どの瓦が一番古いか?の質問。わかりますか?
時代が古いほうが簡素かな?と思いつつ見ていたら、、、

左側が一番古く、右が一番新しいそうです。
木組みフェチとしては、たまらない解体部材保管庫。
先人たちは凄い!としか、言いようがありません。じっくり見れなかったのは心残り。


伝統的な建物や文化財の修復は、毎度ながら、
考えさせられることが多いので
私なりのいつも想うところのポイントについて、綴ります。
1) 耐震補強はするの?、しないの?、どうやるの?
以前熊本で見学した補助金利用の復興のお住まいは、
担当者に質問したら、「しない」との回答でした。
理由は、大きな地震で倒れなかったことと、傾きが少ない事、
予算がないこと、を理由に挙げられました。
今回は、国の指定文化財となっており、
さずがに耐震補強をしないわけにはいきません。
JIAの再生部会の勉強会で、
文化庁は、「耐震補強をしないと認めない」課題があると伺い、
今回の担当の方にも尋ねると、、、、
「する」そうです。そして、なんと、合板も使うとか。
基礎は、コンクリートで打ち直し、
その上に、地覆石にも穴を開けて、ボルトを貫通し、
基礎と緊結するそうです。

石場建てのままでは、現行法に乗っ取らないからですね。
しかしながら、そのやり方では
縦揺れの揺れを逃がしてくれる石場建ての
伝統構法の特性も失うことに。。。
別の場所で知り合った、新築で伝統構法を施工する大工さんに
ボルトに遊びを設けるなどしないと、
動いた時に木部に負担がかかり過ぎると、伺ったばかり。
これから、100年以上はもたせて欲しい文化財。
大きな地震をまた受ける事になるはず。
その時に、ボッキンと行かないように上手に力のバランスを
考慮した補強をしていただけるようお願いするしかありません。
制振ダンパーとか、用いないのかしら?
いろいろと議論したい点はあるものの、時間切れに。
お話を伺いながら、何をどこまで、行うのか、、、、
設計監理者としての苦悩も共有しました。
2) 官民での予算格差!?文化財に登録するメリットとは?
修復の事業費用を伺って、一瞬、目が飛び出そうに!
庭園や石垣、蔵、長屋門など、いくつか建物もあります。
広さからすると、相当な予算がかかることは想像がつくのですが、
地震被害に遭われた時に、持ち主が途方にくれたお話を伺っていただけに
いつ、その予算がついたのか、自己負担は大丈夫なのか、
そのお話も、次回は伺おうと思います。
結局、残そうという想いだけでは、残らない建築。
復興基金や補助金をどう活用できたのかも、
今度リサーチしなければ、と思うのでした。
JIAの再生部会のメンバーから、相続税の免除があるので、
有形登録文化財を相続前に行ったという報告も聞きました。
住まい手や持ち主に、メリットになり、
更に地域や国の文化を残すことができたら、
皆がハッピーですものね。
3)伝統的建物修復の担い手は人材不足?
ご担当の方の会社は東京とのことでした。
熊本には、人材がいなかったのでしょうか。。。。
それとも、引き受けられるだけの余力がなかったのでしょうか。。。。
瓦の製作はかろうじて地元で。
襖や板戸は、、、京都まで持って行かれているそうです。
城下町としての熊本は、かつて全ての職人さんがいました。
しかし、伝統的な建築を新築する機会はほとんどなく、、、
技、手仕事、そういったものが切り捨てられて行ったのだなと
これは、悲しく思うことではなく
仕方ないと思うことしかないのか、複雑な心境になりました。
トータル7年間のプロジェクトに、
実に遠方から、ご家族で
熊本に引っ越してきて下さっているそうです。
ありがたいと思うと同時に、
私たちも対応できるように知識アップとスキルアップが必要と
ますます、ちゃんと学ぼうと思うのでした。
余談ですが、
横浜で出会ったPTA のお母さんが、
夫の仕事で数年前に熊本から戻ってきたという
お話の中で、子どもは熊本の給食が美味しくて喜んでいた
という話を伺っていたので、
お子さんも、そうだといいなぁ、と帰路では想いを馳せました。
最後に、
伝統的なものに関わると、
昔と今の日本の経済事情や文化、
いろいろ考えさせられることが多いです。
学生時代は、古いものの調査なんて、何が面白いんだろう?
と疑問に思っっていたことが、
今、歳を重ねると違う視点で観れ
建築の学びは、その歳にも、よるのかもしれないと、思っています。
目覚めが遅かったというだけかもしれません、笑。
これからの私の課題、
どのような形で、伝統的な木の建築に関わっていけるか、
関わっていくか、、、
法律優先なのか?
伝統的建物の構造特性優先なのか?
予算優先なのか?
この折り合いが、伝統的建物修復の一番の肝と考えています。
これからも、大学の研究者、専門家、そして学ぶ仲間とともに
常に、学びを繰り返しながら、その落とし所を見つけられるような
設計者になりたいですね。
ちょっとオタクなネタにお付き合い頂きまして、
感謝いたします。